気持ちを伝えるハナシ
「(名前)ちゃん」
食器の片付けをしていた時、名前を呼ばれるのと同時に後ろから抱き締められてキヨくんに頬擦りをされた。
録画していた試合を見るって言っていたのに、どうしたんだろう。
質問を投げたら、頬へと伸ばされた手にぐいっと顔の向きを変えられて噛みつくようにキスをされた。
それから啄むようなキスが続く。
唇が離れたタイミングで後ろにいるキヨくんを見ようと体を反転させたら「…………一緒に見たい」と抱き締められた。
「片付けもう終わるから一緒に見よう」
「うん……じゃあ(名前)ちゃんの飲み物俺が用意する」
カップ片手に片付けが終わるまでキッチンで待っていたキヨくんの腕に抱きついたら「可愛い」って言われた。
キヨくんに可愛いって言われるのは本当に嬉しい……けれど、いまだに照れてしまうからその視線から隠れるように顔を腕に押し付けてしまうのは許してほしい。
ソファーに座ったら隣に隙間なく詰めて座ったキヨくんの腕が腰に回って引き寄せられる。
体重をかけて寄りかかれば、同じように体を傾けたキヨくんの頭が私の頭に乗っかった。
その体勢のままぽつりぽつりと会話をしつつ試合を見ていたら、こめかみ辺りに唇が押し当てられた。
それから膝裏に腕が回って、キヨくんの膝に下ろされる。
「びっ……くりした!」
「やっぱり(名前)ちゃんコッチ」
「キヨくんと並んで座るのも好きなんだけどなぁ」
「俺も好き。だけど今日はここに座ってて」
膝上に座った事で近くなった肩に頭を預けたら、離れていかないように私の頭を抱え込んだキヨくんの大きな手。
……テレビがほとんど見えないけれど、しょうがない。
見れない代わりに実況に耳を傾けていれば、キヨくんの名前が聞こえた。
強烈なサーブを叩き込んでサービスエースを決めたらしい……!
相手コートに強烈なボールを叩き込む手は、今は私の頭をあやすように撫でている。
そんな手とキヨくんの体温も相まって、まぶたがどんどん重くなっていく。
「眠い?寝てていいよ。終わったら起こす」
「……ん、でも……わたしも、キヨくんと見たい」
「そんなに俺と一緒がいいんだ……(名前)ちゃんが俺のコト好きすぎる……俺の方が好きだけどね」
落ちていく意識の中で聞こえた言葉に、私の方が好き……って言い返したら、急な浮遊感に襲われて眠気が吹き飛んだ。
突然の事に何が起きたのか分からず慌ててキヨくんにしがみつく。
周りを見渡すとテレビ画面はいつの間にか消えていて、私をお姫様抱っこしているキヨくんが確実に寝室に向かっている事が分かった。
キヨくんをおそるおそる見たら、熱を帯びた視線に射抜かれた。
どさりとベッドに寝かされ、上に覆い被さってきたキヨくんの唇が至るところに押し当てられる。
「……俺を煽ったんだ。まだ寝んじゃねぇ」
「びっくりして目は覚めたけど……!」
「(名前)ちゃんの方が好きなんだろ?ちゃんと教えて……どんだけ俺が好きなのか」
その言葉に、私はキヨくんの背中へと腕を回して体の力を抜いた。
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