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春高行きを決めたハナシ

自分に上がったトスをブロックが3枚ついてもなお、しっかりと決めてみせたキヨくんに会場内が沸き立った。
これで井闥山が……1位通過、だ。
もちろん勝利を信じていたけれど1セット取られていたし、やっぱり点の奪い合いは息が詰まる思いで成り行きを見守っていたから試合が終わった今、安堵感から客席に座り込んでしまうのも仕方ないと思う。
コートを後にするキヨくんをぼーっと目で追っていたら、目が合ってドキっとした。
……あ、終わったら下まで来てって始まる前に言われてたんだ。
荷物を掴んで慌てて走り出せば、タオルを肩にかけたままのキヨくんがもうそこにはいて伸ばされた手に吸い込まれるように自分の手を重ねた。


「キヨくん!おめでとう!最後のスパイクすごかった!」
「喜んでる(名前)ちゃん可愛い。(名前)ちゃんのコト抱き締めたいのに今汗すごいから出来ないの最悪……早く抱き締めたい」


抱き締められない代わりに私の両手をぎゅーっと握ってくるキヨくんの眉間には相変わらずシワが刻まれている。
……せっかく代表決定戦、1位通過したんだからそんな顔しなくても。
苦笑いしながらキヨくんを見ていれば、距離が近付いておでこが合わさる。
そのまま見つめ合っていれば顔を傾けた姿が見えたから、ゆっくり目を閉じればすぐさまキヨくんの唇と重なった。
啄むようなキスが続いて段々とキヨくんの体重がかかってきたから後ろに下がれば、その分キスが深くなって……気付けば壁に押し付けられていた。
首の後ろに回った手が私の頭を持ち上げて、遠慮する事を知らないキヨくんの舌が唇をこじ開けてくる。


「んっ……!キヨ、く……」
「(名前)ちゃん掴むなら腕にして。ユニフォーム汗吸い込んでるから」
「キヨくん待って、も……だめ」
「…………抱き締めんのも我慢してんのにキスまで我慢させるわけ?……絶対今日俺ん家泊まれよ」


ゆっくり頷いたら、さらに体を丸めたキヨくんが噛み付く勢いでキスをしてきた。
唇が離れる間際リップ音が通路に響き、顔中に集まる熱を感じながらキヨくんの行動を見守れば私の手を引いて歩き出した。
距離が開かないように慌てて歩みを早めて隣に並べば、どちらからともなく指が絡まった。
キヨくんの手のひらも指先も、まだ汗で湿っている。
……そうだよね。さっきまでコートで戦ってたんだもん。あんな、すごい試合してたキヨくんと付き合っているって……本当すごい事、だよなぁ。
ちらりと隣を見上げれば、その視線に気が付いたキヨくんの視線が向けられた。


「俺今かなり我慢してんだけど、そんな可愛い顔向けるんだ……俺を試してんの?」
「え、あ……違くて……さっきまであんなすごい試合をしてたキヨくんと今一緒にいるんだなって考えてて……」
「前から言ってるけど勝手に距離作んな。何しようが俺が(名前)ちゃんの幼馴染みで彼氏なんだ。余計なコト考えてる暇あんなら俺を想ってろよ」


距離……なんて、あぁでもそうかもしれない。
活躍をするキヨくんは遠い存在に思えてしまうもの。
でもキヨくんのムチャな言い分を聞かされて、思わず笑ってしまった。
言った本人は笑われた事に不満げな表情を浮かべてしまったけれど、キヨくんの言葉が私にとってどれほど嬉しいものか分かってないでしょ?
私のネガティブな思考には敏感に気が付いて、何かあるといつだって言葉をくれるキヨくんだから……安心してすべてを任せようって思えるんだよ。
キヨくんの数歩先に飛び出して手招きをしたら体を屈めて話を聞く体勢になってくれた。
絡んだ指はそのままに、肩に手を置いて背伸びしながら私からキヨくんに小さなキスを一つ。


「キヨくん大好きだよ。いつもありがとう……自慢の彼氏、だからね?」
「どんだけ俺を煽れば気が済むんだよ……汗かいてるから抱き締めらんないって言ってんのにさ……」
「風邪引かないでね。ちゃんと大人しくキヨくんの家で帰り待ってるから」


目を見て伝えたら、絡んだキヨくんの指先に力がこもる。
それから、また顔が近付いて鼻先が触れ合う。
至近距離で視線が絡まった瞬間……あんなに賑やかだったのに、また周りの声が聞こえなくなった。
両手で顔を挟まれ、また何度もキヨくんの唇が重なった。
……意識が全部キヨくんに持ってかれる。
唇が離れた直後、私の顔を見たキヨくんが驚いたように目を見開いたけれど、すぐ満足そうな笑みを浮かべて体育館の出入口まで連れて行ってくれた。
……私、どんな顔してたんだろう。



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