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優先してほしいハナシ

学校に着いて、HRまで友達と時間を潰していたら朝練を終えた生徒が廊下に増え出した。
その中にはバレー部もいて、ドアを見たらちょうど古森くんと……キヨくんが教室に入ってくるところで。
目が合ったから手を振れば、キヨくんが一直線に向かってきたから座ったまま見上げたら、ちょっと距離が近すぎて首が痛い。


「おはようキヨくん、お疲れ様」
「うん。おはよ(名前)ちゃん…………ねぇ俺に何かない?」
「え、何か?」
「……待ってるから」
「だから何を!?」


頭上にハテナが浮かんでいる私の頭を撫でて、キヨくんは自分の教室に向かった。
やり取りを見ていた古森くんに視線を向けるも首を横に振っている。
疑問が一切解決しないまま時間だけが過ぎ去って、休み時間にカバンを漁っていたら入れた覚えのないタオルがあった。
……キヨくんのタオルだ、これ。
ご丁寧にも袋に入れられ奥底に仕舞ってあったから家を出る時は全く気が付かなかった。
え、いつ入れたの?待ってるってコレ?
思わず机にガクリと項垂れてしまった。


「どうした?」
「これ……キヨくんのタオル入ってた。朝言ってたの多分この事だ」
「え、なんでタオル?どうするそれ、部活ん時に渡しとこうか?」


古森くんの申し出に首を横に振ってお断りをした。
この間キヨくんが言ってた気がする。
たまには会いに来てって。
……違う。こんな言い方してなかった。
なんて言ってたっけ?
あの日のキヨくん不機嫌だったから棘々しかったんだよなぁ。
確か……、いっつも教室から出てこないけど、そんなに俺がいないそこが楽しい?古森とばっか話しすぎじゃね?隣のヤツとそんな毎日話す内容なんかあるワケ?たまには俺のところにも来てよ。


「――……って言われたの。だから古森くんに託したら大変な事になっちゃう」
「俺そんなに目の敵にされてんの!?」
「あー、でもキヨくんいつもそんな感じじゃない?とりあえず次の休み時間に渡して来ようと思う」


宣言通り、次の休み時間にタオルを届けてしまおうとキヨくんの教室に来たまではいいんだけれど、覗いたら机を女の子たちに囲まれていた。
キヨくんは嫌な顔を隠しもせず、無視を決め込んでいる。
私もその輪に入ろうか廊下から覗いて考えていたら、話しかけ続ける女の子たちをジロリと睨んだ拍子にキヨくんと目が合った。
驚いているキヨくんに小さく手を振れば、何も言わずただこちらを見てきたから恐る恐る近付いた。


「き、キヨくん……タオル持ってきたよ〜……」
「(名前)ちゃんもっとコッチ」


近付いたら伸びてきた手に掴まれて引き寄せられた。
すぐさま腰に回った腕の力強さに苦笑いがこぼれてしまう。
キヨくんの行動を目の当たりにした教室内がざわざわと賑やかになる。
私の教室に来る事が大半だから、この教室にいる人たちからしたらこうなっているキヨくんの姿が珍しいらしい。
ただ、ざわめきの中に気になる会話が何度も聞こえてきて教室を見渡してしまった。


「?……聖なる……領域?」
「よそ見すんじゃねぇ」
「え、あ、ゴメンね」
「俺に抱き締められてんのに(名前)ちゃん何見てた?俺以上に気にするもんなんてねぇだろ。それとも何、あんの?」


慌てて首を横に振っても、疑いの眼差しを向けられた。
座ったまま私を抱き締めているからいつもとは逆でキヨくんから見上げられているのに……圧が凄まじい。
謝罪の気持ちも込めてゆっくりと癖っ毛に触れれば無意識だと思うんだけれど、もっと撫でろと言わんばかりに私の手のひらに頭を押し付けてきた。
顔にかかっている前髪をよけてあげようと指を伸ばせば、目を閉じて素直に受け入れたキヨくんに思わず笑みがこぼれてしまう。


「珍しいね……今日はちょっと甘えん坊さんなキヨくんですか?」
「……悪いのかよ」
「ううん!悪くないよ。可愛いなって思っただけ」
「190近い男に可愛いとか言うの(名前)ちゃんだけだと思う……(名前)ちゃん以外に言われたらムカつくけど」


大人しく、ただ撫でられるままのキヨくんの癖っ毛を楽しんだところで、ふと時計に目をやればチャイムが鳴るギリギリの時間になっていた。
腰に回る腕から抜け出そうと両肩をそっと押したら、さらに強い力で抱き締められて焦った。
私が力で勝てない事はもちろんだけれど、スポーツマンなキヨくんに強く出れない事も分かった上でこういう行動をしてくるのはズルイと思う。
キヨくんはフフンと勝ち誇った笑みを浮かべて私を見ていた。
……これはもうチャイムが鳴った瞬間、教室に駆け込む未来が決まったなぁ。



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