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気にかけすぎているハナシ

「(名前)ちゃん、おはよ」
「キヨくんだ……おはよ〜」


挨拶を返したらじっと見つめられた。
よくある事だしと様子を伺えば手を優しく引かれ、すっぽりと腕の中に収められた。
それから頭を撫でられて、腰に回る腕に力がこもる。
じんわりと伝わる体温に安心はするけれど、何も言わないキヨくんに首をかしげてしまう。
何かあったのかな……。
見上げれば腰に回る腕はそのままに、頭を撫でていた手が今度は頬にするりと宛がわれた。
手と反対側の頬には、いつの間にマスクをずらしていたのか……唇が落ちてきた。
キヨくんの好きにさせていたら唇が耳元に寄せられて、当たる息がくすぐったい。


「(名前)ちゃん顔色悪いんだけど。もしかして女の子の日?」
「え、よ、よく分かったね……」
「やっぱり。そろそろだとは思ってたけど……ちゃんと俺に言って。(名前)ちゃん腹痛大変何だろ?」


確かにキヨくんに伝えた事はあったけれど、そろそろだと思ってたって……把握されてたんだ。
ありがたいような、恥ずかしいような……。
あ、だからぴったりと抱き締められたままなのか。
前にキヨくんから「俺に出来るコトあるか?」って聞かれた時に抱き締めてもらったから。
心配そうな顔が覗き込んできて、目が合ったから笑いかけたのにキヨくんの眉間にシワが寄った。
痛みを我慢している事がバレたらしい。


「ねぇ、机にある水いつ買ったやつ?」
「さっき自販機で」
「ハァ!?体冷やすつもり?俺が買ったの常温だからそれ飲んで」
「……ワカリマシタ」


その後もキヨくんは矢継ぎ早に言葉を投げかけてきた。
鎮痛剤はあるのか、貧血になってないか、俺のジャージ膝にかけてろ……と甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている。
ここまでされたら周りには私の体調が悪いという事は筒抜けだ。
いや、本当あの……生理痛なんです。
なんて言えないし、というかここまでされたらクラスの皆にはバレているのではないかと勘ぐってしまう。
そんな事になっていたら恥ずかしすぎる。
思わずキヨくんから顔を背けてしまうのは仕方のない事だと思う。
顔を背けながら席に着けば隣に座る古森くんから声をかけられた。


「(名前)ちゃん体調悪いの?」
「今(名前)ちゃん繊細なんだから触んじゃねぇ」
「……ゴメンね古森くん、繊細なのキヨくんの方だから気にしないで」
「ブッ……!分かったよ。まぁ何かあったら声かけて」


座った私の手からジャージを抜き取ったキヨくんはパサリとそのジャージを膝にかけてくれた。
それから何か話す訳でもなく頭をずっと撫でている。
きっとキヨくんはチャイムが鳴るギリギリの時間までこうしているに違いない。
……小さい頃から感じている安心感は私にとっては薬よりも効果は絶大で、キヨくんに抱き締められたり頭を撫でられるだけで痛みが和らぐから不思議。
数日だけだからとここぞとばかりに甘えてしまう私だけれど、キヨくんは嫌な顔を見せる事もなく毎月お世話をしてくれるんだよなぁ。


「いつもありがと、キヨくん」
「当たり前だろ。(名前)ちゃんは俺との子供を産むために毎月苦しんでんのに、俺は変わってやるコトも出来ねぇから少しでも和らげばいいと思ってやってるだけ」
「あ……そうなんだ。でも、うん……和らいでるよ。ありがとう」


予鈴が鳴って、頭を撫でていた手が名残惜しそうにゆったり離れていった。
手を振ったら、小さく振り返してくれたキヨくんをその場から見送った。
……でもね、キヨくん。
キヨくんの最後の発言のせいで隣にいた古森くんには私が生理痛で苦しんでいる事がバレてしまったよ。



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