×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


たらればも無理なハナシ

放課後になって荷物をまとめていたら横から威圧感が……。
この距離まで近付いて来る人なんて、私の知る限り一人しかいない。


「キヨくんのクラスは終わるの早かったんだね」
「だから(名前)ちゃんに会いに来た。途中まで一緒に行こ」
「あー……今日委員会があって……」


申し訳なさそうに伝えれば、ぴくりと動いた眉。
意味分かんねぇ……って顔してる。
マスクをしているのに目が語りすぎて感情がだだ漏れだからねキヨくん。
委員会って伝えても私の横から全く動かないで、じっと見下ろしてくるキヨくんに苦笑いがこぼれた。
とりあえず手を握ればぎゅーっと握り返されて、案の定行くなとその行動が物語っている……。
いや、行かないという選択肢はないんだけれどどうしたものかな。


「あ、佐久早!悪いけど俺委員会で遅れるからよろしくなー!お待たせ(名前)ちゃん。さっさと当番終わらせようか」
「……何で委員会まで一緒なわけ?てか俺知らなかったんだけど。古森、俺の(名前)ちゃん狙ってんの?信じらんないんだけど」
「違う違うよキヨくん!ジャンケンで決まったの!……ほっ、本当だよ!?」


繋いだままだった手が勢い良く引かれて、キヨくんに抱き締められた。
表情もそうだけれど、腕の強さからもかなりご立腹なのが分かる。
……ジャンケンで余り物やらされただけなのに。
どうにか手を動かして机の上の荷物を掴んだ私は、キヨくんの体に寄りかかりながら廊下へと押し出した。
このままじゃお互い部活にも当番にも遅れちゃう。
古森くんに背中をパシンと叩かれたキヨくんはさらに顔をしかめた。


「そんな拗ねんなって!考えてもみてみ?知らない男と俺、どっちが(名前)ちゃんと組んだ方がいいかさ」
「…………俺以外とか考えたくもねぇ」
「例えばの話だよ。そんな心配なら当番終わったら体育館に(名前)ちゃん連れて行くって!」


古森くんの提案に、ほんの少しだけ腕の力が弱まった。
まさかのキヨくん……今の提案に揺れ動いた?
でも待ってほしい。
キヨくんがバレーをやっている姿を見るのは大好きだけれど、見学に行く行かないは私が決められるわけじゃないんだ。
キヨくんみたいに眉間にシワを寄せて見上げたら、何を思ったのかマスクをずらして顔を近付けてきた。


「キヨくん!ち、がう!」
「違くねぇ。(名前)ちゃんキスしてほしいって顔してた。ぜってぇするし」


反論をしようと口を開いたらアゴを下から掴まれて持ち上げられ、一瞬のうちに唇を塞がれた。
有言実行したからか、どこか満足そうに笑うキヨくんが目の前にいる。
私を抱き締め直したキヨくんが頭に顔を乗せて体重をかけてきた。
背中を数回叩くと目は合わせてくれたけれど、腕は離れていかない。
ここから身動きが取れないのは困るなぁ。


「キヨくん部活いいの?」
「俺が行ったら古森と二人っきりじゃん。それが分かってんのに行けるかよ」
「先生もいるから、ね?」
「……遅くなんなら俺を待ってろ。早く終わったら俺ん家に帰ってて」


私を抱き締める腕にぎゅーっと力がこもった。
それから、すりっと寄せられた頬。
マスクのゴムが頬に当たっているのも気になるけれど、背後から「お前……その顔は(名前)ちゃんに見せられないぞ」って聞こえた。
ど、どんな顔してるんだろう……。



|



MAIN | TOP