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教室の装飾作りのため、机を端に避けて床に座り込んでグループ毎に作業をしていた。
段ボールに書かれた線に沿って色塗りをしていた時、耳にかけていた髪の毛が流れ落ちたのが気になってかけ直そうと手を動かしたら自分でかける前に耳にかけ直された。
……確認するまでもなく、それをやったのは隣に座って作業をしていたサムくんで、向き直ってお礼を言えば完全に作業の手を休めて私に腕を伸ばしてきた。


「(名前)、もっとこっち来て。……あ、膝座る?それがええと思うんやけど」
「サムくんそんなに引っ張っちゃダメ……座らなっ、」
「(名前)ー、やってもうたわー。手ぇ、ちょっと擦ったんやけど」
「え、えっ!?うそ、待って……!見せて!」


指先を下に向けて手をゆらゆらと揺らしながら1組の教室にやって来たツムくんの間延びした言葉は、私からしたら大変な事で……サムくんの腕の中から慌てて抜け出して揺らしているその手を握り締める。
両手で包むように持って確かめるように色んな角度から見ていたら、ツムくんの空いていた片手が私の腰を引き寄せた。
すっぽりと腕の中に収まった私の頭にすりすりと頬擦りをしてくるから、頭に重さがかかっているけれど今はこの体勢も距離も気にならなくて、ただツムくんの手や指を見るのに必死になっていた私の耳には双子の話し声も音として流れていくだけだった。


「……切っては、ないみたいだね……よかったぁ……!」
「さっきまでなんや皮膚がヒリヒリしとったんやけど、(名前)にぎゅって握ってもろたから今は落ち着いてんねん。でも心配やからしばらくはこうしててな?」
「……あ?何言うとんねん。(名前)、そんなんツムの嘘に決まっとるやろ。手ぇ使うような作業をこいつが手伝う訳ないやん……そうやって言えば(名前)の意識が全部自分に向く事分かってんねん!」
「え、あ……でも……」


顔の高さに上がったままだったツムくんの指先が私の指先と絡まる。
サムくんはああ言っていたけれど、やっぱり心配だから指先にきゅっと力を入れたり確かめるようににぎにぎしていたら、その手をツムくんが自分の頬に導いてから覆うように手を置いたから動かせない。
サムくんからは次々と文句が聞こえるけれど、ツムくんに肩をしっかりと抱き締められているから上手く振り返る事が出来なくて……でも声だけ聞くとかなり殺気立っている。
無意識に空いた手がツムくんのシャツを握り締めたら、両腕で抱き締められて頭を撫でられた。
そっと頬から手を外したけれど行き場がなくて、ツムくんの胸元に置くと頭上から楽しそうな笑い声が聞こえた。


「かわええな〜!しっかり腕ン中に閉じ込めたろ」
「つ、ツムくん……!力強い、からっ」
「その声もかわええ!ほんまもう(名前)は可愛さの塊やん!」


おでこをぐりぐり押し付けてくるツムくんの力が強すぎて体をのけ反らしても、反らした分だけ距離を詰めて来るから余計に体勢が苦しくなっただけだった。
ある程度、満足したのかツムくんの動きが止まったら互いの鼻先がぴとっと触れ合って、じっと見つめられた。
動けなくて、見つめ返していたらツムくんがふんわりと笑って私の頬に指を滑らせる。
くすぐったさにぴくりと体が無意識に跳ねた時、頬にあった手が素早く後頭部に回って思いっきり引き寄せられた。


「ん〜っ!はぁ……つ、ツムくん!ここ、教室だからっ!」
「知っとるで。でも(名前)はええ子やから俺から逃げへんよな?……もっと俺と一緒にいたくてしゃあないやろ?」
「……い、れるならいたいけど、でも、3人一緒じゃ、」
「独り占めさせてや。何のために今(名前)を壁際に閉じ込めてると思ってんねん。学校でも(名前)と愛深めたらアカンの?」


ツムくんの言葉に言い淀んだら、また唇を塞がれた。
下唇を甘噛みされたり吸われたりしたせいで、腰とかツムくんの手が回っている背中がピリピリと痺れる感覚がするのは……気のせいじゃないと思う。
耐えようと、ぎゅうっと胸元のシャツを掴んだら唇を深く塞がれてしまった。
ぬるりと口の中に入り込んで来た舌が、私の舌を絡め取っては好き勝手に動いていて何も出来ない私はツムくんに身を委ねるしか出来なかった。
さっきまで聞こえていた騒ぐクラスの声が聞こえない……それ程にツムくんで今いっぱいいっぱいになっている。
ゆっくり離れたツムくんとの間には、どちらのものか分からない唾液が糸となって繋がっていた。
くたりと胸に寄りかかると、またしっかりと抱き締められて髪をすくようにツムくんの指先が滑った。


「ええ加減にせぇよ、ツム」
「フッフ。サムの入り込む隙間がないくらい(名前)とラブラブでごめんて!」
「ほんまムカつくんやけど……!」
「見ての通りめっちゃラブラブやからベストカップルの投票、皆頼むで〜!去年は俺らン事知らんかったからおんなじクラスだったサムが選ばれただけやで。……(名前)、ほんまに愛し合っとるのは俺らよな?」


正常に働かない頭でツムくんから問いかけられて、正解が分からなくて見上げたら今まで髪を撫でていた手が私の髪を片側に流した。
何かをじっと見つめたツムくんの顔が近付いて、首筋に音を立てて吸い付いた。
咄嗟に、出そうになる声を抑えて視界いっぱいに広がった金髪を見るしか出来ない。
前に視線をずらせば……私たちを見ているサムくんと目が合った。その手は色が変わるくらい握り締められていて、今にも飛びかかって来そう。
ツムくんの唇が私の首筋から離れた瞬間、手首を掴まれてくるっと立ち位置を反転させられたから、踏み出していたサムくんの動きが止まる。
掴まれたままの手首からさらに視線を上げると挑発するように笑うツムくんがいて、さっきまで唇を寄せていた首筋に頬擦りをしてそのままサムくんの方へ少し視線を傾けた。
手首を掴んでいた手はするりと指先と絡み合い、片手は私の顎を緩く掴んで持ち上げて付いたばかりのキスマークを目の前に晒される。


「見てみぃ……綺麗に付いてるやろ?(名前)には俺のキスマークがほんまに似合うなぁ?」
「上書きすんなや。……俺は(名前)とおんなじクラスやから一緒におれる時間は山程あんねん。ツムがいないトコで(名前)に付け直すし、なんなら(名前)からキスマーク付けてもらう」
「ア゙?」


ツムくんが周りを気にしないで行動するから、話を聞き付けた人たちが1組に集まっていた。
双子は大して気にも止めていないみたいだけれど、人前でちゅーされるのは……やっぱり慣れない。
双子が競えば競う程、実行委員たちが「今年は盛り上がる」って喜んでいる。
……いっそのこと、双子がベストカップルで選ばれた方が一番平和的に終わりそうなんだけど、言葉にしたら絶対に怒られるんだろうな。
あ……結局、ツムくん手は大丈夫なの?



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