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ついに始まった文化祭。
2日間あるうち、1日目は学校内だけで2日目が一般公開になる。
だから今は稻高生たちだけで楽しんでいるんだけれど、かなり盛り上がっている。


「スクープやで!稲荷崎のアイドル同士の熱愛が発覚やって!詳しくは2年1組のアイドル喫茶に来たら分かるらしいで〜!」


廊下で声を張り上げて面白おかしく呼び込みをするクラスの人たちを教室内から眺めていたら、後ろからきつく抱き締められた。
それから頬に押し付けられた唇。
視線を動かせば、クラスの女の子たちが気合いを入れまくって作り上げた衣装に身を包むサムくんの姿。
髪型も衣装に合わせて緩く後ろに撫で付けている。
……普段と違うからだと思うけれど、すっごくカッコいい。
ぽやーっと見ていたら、体の前で絡んだ指先に力が込められた。


「(名前)めっちゃかわええ。その服似合ってんで」
「サムくんもその衣装、すっごくカッコいい……普段と違うし、なんか直視出来ない」
「それはアカン。俺らの熱愛発覚してもうたんやからちゃんと俺見て?で、好きって言うて」
「熱愛って……」
「ついにバレてもうたな〜どないしよか?あ、俺の役目はずっと(名前)とイチャイチャする事やって」


クラスの出し物がアイドル喫茶というものに決まった時は、名前の響きからどんな喫茶店をやるのか想像は出来なかったんだけれど……その日の放課後、学級委員長と数人の女の子たちがサムくんを手招きして耳打ちをした時に、少し目を輝かせて楽しそうにした理由が、今日になってようやく分かった。
だから衣装合わせも文句言わずに参加していたし、積極的に準備も手伝っていたんだ……。
私は詳細まで聞いてなかったのに。
聞いていたのは、クラスから選抜したアイドルに扮した男女数人がお客さんからの投票で1位を決めてもらう……それからプラス料金を払えばポラロイドカメラでツーショットも可能だとか。
準備期間の事を思い返していたら、前に回り込んだサムくんの手が私の頬を撫でて、両手で軽く持ち上げられた。


「ほんまに(名前)かわええ……睫毛がいつもよりクルンってなっとるし、唇もぷるぷるしとってちゅーしたなる。(名前)、ちゅーしよ」
「サムくん待って、せっかくメイクしてもらったのにちゅーしたら落ちちゃう」
「また塗り直せばええやん」


作ってもらった衣装を着ているから、大きく動いてもし破いちゃったら……って気持ちが働いて強く押し返す事も出来ず、近付く顔に目を閉じたら廊下からざわつく声が聞こえたから目を開けると、しかめっ面で外を睨み付けているサムくんが見えた。
背中に回った腕にぐっと引き寄せられ、肩にサムくんの顔が乗る。
ぎゅうううっと抱き着いたサムくんの不機嫌そうな呟きが耳元で聞こえた……「来んな、ツム」って。


「オイどう言う事やねん!熱愛って!アイドルだか何だか知らんけどな……スクープやったらバレーボール選手とアイドルの方が盛り上がるやろ!稻高やぞ、ここは!」
「おぉ……!侑は天才か」
「……いいんちょ、どっちの味方なん?」


どうにかして振り向いたら、そこには稲荷崎のユニフォームを着たツムくんの姿。
え、2組って確か……コスプレしての縁日とかだったと思うんだけど、それコスプレでいいの?
「目玉あるから来てな!」って言われてはいたんだけど、これの事だったのか……。
体育館じゃないところで見るユニフォームは何だか新鮮で、ついつい見ちゃう。
……やっぱりユニフォーム、いいなぁ。
サムくんみたいに着飾っている訳でもないのに、目が離せない。


「(名前)、見んといて……俺だけ見てて?」
「フッフ。(名前)がバレー好きなんはよーく知っとるやろ?アイドルなんかより選手の方に目が向くに決まっとる……。残念やったなサム!」
「来んな帰れ……俺と(名前)はラブラブカップルやねんから、ツムの存在はお邪魔虫やで」
「負け犬の遠吠えやな」


その言葉にイラッとしたのか、無言のままサムくんは私の手首を掴んで持ち上げた。
何をするのか見ていたら、左手薬指の根元を思いっきり噛まれた。
あまりの痛さに体が跳ねる。
歯形がくっきり残った薬指に唇を寄せたサムくんが……ちゅうっと音を立てて吸い付いた。
それからぬるりと舐められて、その刺激にまた体が跳ねた。
サムくんの行動に教室内が静まり返っている。
そんな中で騒ぎ立てる人が1人……ツムくんだ。
大股で距離を詰めたツムくんに右手を掴まれる。


「その薬指は俺のもんや……それに投票の中間発表見てへんとは言わせないで。ベストカップル、俺と(名前)が今一番票集めとる」
「票言うても学校の奴らのだけやろ。一般公開されたら逆転するに決まっとるやん……俺と(名前)、文化祭中はずっと一緒におるんやし。世間から見ても俺らが一番お似合いっちゅう事が証明されるだけやから」
「オモテに飾られる写真、俺らの方がイチャイチャしとって見た目からしてただのカップルやからその写真だけで俺らは票貰えるわ!」


今の双子の立ち位置でアイドルか、バレー選手か……私がどちらを選ぶのか周りで賭けが始まってしまった。
でも待って……最初のうちは双子の喧嘩を聞いていられたけれど、だんだんとヒートアップしていって、なぜかどっちが綺麗に歯形を私の指に残せるかの勝負に変わってて両手の薬指が双子の唾液でテカテカと光っている。
……本当に薬指だけ細い指輪がハマっているみたい。
双子が指に噛み付いているところは写真部の部長さんに撮られていて、すぐさま展示品の1つに加えられたらしく、それを見た生徒が1組に押し寄せて来たから初日は大盛況に終わった。


「(名前)、明日は俺と頑張ろうな!」
「(名前)が頑張るのは俺とやんな?」


……それからコンテストの票が締め切られた。
一般公開になる2日目の午前中に体育館で上位3人がアピール出来るんだけれど、他薦だったとは言えベストカップルの上位2組が双子と選ばれていた。
去年はサムくんと選ばれただけだったけれど、今年は双子とステージに立つの?
それっていいの……かな。
双子の様子を見ると自分が選ばれると思っているからなのか、肩や腰にそれぞれの腕が回って引き寄せて歩こうとしているから真っ直ぐ歩けない。


「ね、ねぇ……明日、2人とステージ上がるの?」
「当たり前やん!なんや、(名前)は俺とカップルは嫌なんか!?」
「あ、そうじゃな、」
「(名前)は俺とステージ上がりたいんやろ?」
「えっと、だから……カップルで選ばれたのに2人と上がるのおかしくない?3人で上がる、の?」


双子がその場に立ち止まったから、私の足も自然と止まる。
目を合わせて、ゾクリとした。
……そこには無表情の双子が私を見下ろしていたから。
な、んでそんな顔してるの……。
そんな表情を向けられた事がなかったから、少しの恐怖。
でも体に回る腕が後退りすら許してくれない。
動けずに双子を見ていると、それぞれ手を取られて壁に押し付けられた。
顔を覗き込んでくる双子の顔は無表情のままだ。
私の名前を呼ぶ声も低く、冷めている。


「誰かに何か言われたんか?」
「……い、われてない」
「ならええやろ3人一緒で……今まで通り(名前)は俺らに愛されとったらええねん」
「それに俺ら双子やし。3人一緒にいても何もおかしな事あらへんやろ」
「う、ん……」


私の返事を聞いた双子が両頬に唇が押し当てられた。
大人しく受け入れていたら、双子が笑う。
……やっと見れた笑顔に安心した私はそのまま双子に身を委ねたら、きつく抱き締められた。
コンテスト、どんな結果になるんだろう。



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