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「この企画で最優秀賞は貰ったも同然やな!体育祭同様、頼むでバレー部の3人!あとコンテスト系も1組で総ナメにすんで」
「……はーい」


体育祭同様、絶好調な我らが学級委員長……。
稲荷崎の文化祭が始まる。
HRが終わって、席を立った瞬間から嬉しそうに私にくっついて歩こうとするサムくんを見て「エエ感じやな!」って笑顔で親指を立てる委員長に別れを告げて部活へ向かう。
2組の前でツムくんたちと会ったんだけれど、ツムくんと目が合った時には顔がしかめられていた。
……サムくんはもう周りなんて見えていなくて、抱き着きながら私にちゅーをしようと必死になっている。


「さっきから何なん?ちゅうか、(名前)こっちに寄越せや」
「あー……うん、あのね多分これ文化祭終わるまでこのままだと思う。あと動けない」
「(名前)、ちゅーしよ?顔こっちに向けてくれへんと届かないやん」
「サムは(名前)から離れろや!……もうええわ。俺が(名前)にちゅーしたるから、そのまんま押さえとって」


頬に手が触れて首を傾けたツムくんが目の前に迫る。
……唇が触れそうになった時、私を抱き締めたままのサムくんが長い足を伸ばしてツムくんに蹴りを入れた。
素早く私を回転させたサムくんがツムくんから隠すようにしっかりとその腕で頭とかを押さえるから、声しか聞こえないけれど……やっぱり喧嘩が始まったみたい。
サムくんの胸元に顔が埋まっているから少し息苦しくて、せめて腕の力を弱めてほしいって意味で背中を数回叩けば……ぎゅううっとさらに強く抱き締められた。
圧迫がすごくて変な声が出る。


「俺ら、愛し合わなきゃいけないねん。邪魔すんなツム」
「サムくっ……ちょっ、と、苦しい……」
「俺ン事が好きすぎて胸が苦しいんやろ?俺もやで、(名前)……だからちゅーしよ、な?」
「…………はぁ……侑、俺を睨んだって変わらないよ。学級委員長が文化祭に向けて上手に治を煽ったんだから」


サムくんから長い長いちゅーをされている間、角名くんの声が聞こえる。
それからツムくんの不機嫌そうな声も……。
息が続かなくて、サムくんの背中に置いたままだった手に力が入ってYシャツを握りしめてしまった。
今のこの状況は誰がどう見ても、廊下で抱き締め合ってちゅーをしている仲良しカップルにしか見えないと思う。
……サムくんが、学級委員長の思い通りに動いている。
しかも喜んで動いているから私にはどうする事も出来ない。
唇を離したサムくんは、私のおでこにすりすりと自分のおでこを合わせてから、啄むようにまた私の唇に触れてくる。


「好き、ほんまに好き」
「あ、ありがと……私も好きだから、ちょっと離してほしい」
「……俺の方が(名前)ン事好きやし。好き通り越してめっちゃ愛しとるんやけど」
「うん……っ、ありがと……ツムくん!私も愛してるから引っ張んないでくれると嬉しっ、い……!」


どうにかサムくんから私を引き剥がそうと、ずっと引っ張り続けるツムくんの腕が私のお腹に綺麗にハマって……かなり痛い。
サムくんも私が引っ張られる度に腕に力を入れるから、何というか、双子の体内に取り込まれそうなくらい前後から力がかかっていて、体が悲鳴を上げている。
人が周りに集まって来たみたいで、ガヤガヤと賑やかになってきた。
双子のどっちが勝つか賭けをする声も聞こえてきた中、ある意味この元凶を作り出した学級委員長の声も聞こえた気がした。
……お願いだからこれ以上、双子を焚き付けないでと思いながら、耳を傾けてみる。


「治アカンやん!ベストカップルの選考まで侑と取り合ってたら票がバラけてまうやろ!愛し合っとるならちゃんと死守せな!……(名前)もやで?治とずっと一緒におる言うたやん!」
「いっ、言ってない言ってない!いいんちょ、やめて!」
「!…………(名前)は俺とおるのは嫌なんか……?」


あまりにも悲しそうな声色にギョッとして顔を上げるとそこには傷付いた表情で私を見つめるサムくんがいた。
慌てて首を横に振ると、ぐりぐりとおでこを押し付けてくるサムくんに心が痛んだ。
私からサムくんに抱き着いて、そんなことないからって必死に伝えていたら「……ちゃんと俺ン事、好き?愛しとる?」って確認してきた。
何回も確認してくるサムくんに言われた分だけ頷いて好きって伝えていたら、後ろにいたツムくんの手が私の口を一瞬塞いで言葉を遮った。


「今年は俺と(名前)がベストカップルになんねん。おんなじクラスってだけで簡単に今年も選ばれると思うなよ」
「……今年も来年も、そっから先の未来も(名前)とベストカップルになんのは俺や」


睨み合っていた双子が首筋に唇を寄せてくる。
……甘噛みとかそんな可愛いものじゃなくて、がぶりと思いっきり噛み付いてきた。
あまりの痛さに耐えられなくてサムくんのYシャツをまた握りしめてしまったから、双子の行動が振り出しに戻った。



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