×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




午前の競技が終わっての昼休み、日射しもジリジリとまだ暑いからバレー部で集まって体育館でご飯を食べていたら、隣に座っていたツムくんがさらに体を寄せて顔を覗き込んで来た。


「なぁなぁ!俺を愛しとる(名前)は、愛しとる俺のうちわ作って応援はしてくれへんの?」
「…………うちわ」
「ほんまなんやねん、お前。人でなしにもほどがあんで。俺に言おうとしてた(名前)を連れ去って無理矢理言わすとか最低やん……(名前)はツムん事なんか愛してへんわ」
「ハッ。男の嫉妬は見苦しいでサム!俺と(名前)が愛し合いすぎとって入り込む隙間がないからって文句言うなや」


それぞれ弁当を片手に持っているから掴み合いまではならなかったけれど、口論が止まらない。
それでもツムくんは勝ち誇った笑みを向けているから、サムくんはそれが気に入らないみたいで隣からの圧が凄まじい。
……でも、うちわかぁ。
出したら双子の態度、絶対逆転する。
だってサムくんとはクラスもチームも同じなんだもん。イベントが好きな私たちのクラスが何も用意してない訳がないじゃない……。
そっとサムくんを見ると、私の視線の意味に気が付いたのか態度が一変した。
でも続く言葉の刺々しさは変わらない。


「なぁにが俺を愛しとる(名前)じゃ……所詮おんなじチームどころかクラスにもなれない奴が調子乗るなや。(名前)、現実叩きつけたれ。無理矢理に言わされてツムなんか愛してへんって」
「話題少し変わってるけど……あのね、ツムくん……クラスの女子では作ったの」
「チームが関係あらへん部活対抗リレーもあんねんで?クラスで合わせたやつやなくて、(名前)なら個別に作っとるやろ?」
「あ、それは……」


ドキッとして少し言い淀んだら、ツムくんが途端に不機嫌な表情で私を見てきた。
違うのツムくん……!せっかくだからツムくんのうちわも作ってるんだけれど、ここで言ったら昼休み中ずっと口論を続けるでしょ?
それに部活対抗リレーに出る選手のうちわは作って来たのに、自分の中で結論出すの早いよ……!
とりあえずサムくんのうちわを本人に渡したら、誰が見ても分かるくらいに嬉しそうなオーラで見つめていた。


「めっちゃすごいな。俺の名前ンとこ、ハートになっとるやん……!ここ、口の字ンとこがハートって(名前)がほんまにかわええ事しとる」
「喜んでくれて嬉しい」
「これ、(名前)が持って応援してくれるんやろ?ヤバイやん……めっちゃ嬉しいんやけど」


うちわを眺めては感想を伝えてくれるサムくんを見て、頑張って作った甲斐があったなって思った。
サムくんはずっとうちわに意識を取られている。
……その光景を羨ましそうに睨みながら見ているツムくんにこっそり声をかけて、袋に入っていた「あつむ」のうちわを見せれば、驚いた表情から嬉しそうな笑顔に変わった。
勢い良く抱き着いてきて、そのまま一緒に床に倒れ込んだ。
両手で頬を押さえられて、ぐりぐりとおでこを合わせてくる。
合わせたまま、内緒話みたいに小声で名前を呼ばれた。


「もう、ほんまになんなん……可愛すぎやん!ちゃんと俺の名前ンとこハートになっとって、(名前)からの愛しか感じへんわ」
「……さっきまで不機嫌そうにしてたのに」
「(名前)のコトやと感情の抑えが効かへんのやからしゃあないやろ」


話す合間にもツムくんは啄むように唇を何度も何度も合わせてきた。
それから背中に腕が回ってぎゅーっと抱き締められて、ツムくんの肩に顔が半分以上埋まった。
目を開けたら、その肩越しに私たちを立った状態で無表情に見下ろすサムくんの姿……。
ツムくん、私の首に顔を埋めている場合じゃないって。足も絡めない!
ゆらりと近付くサムくんの手には、応援うちわ。
そのアンバランスさが怖さを引き立てている。


「(名前)も俺の首にキスマーク付けてええで〜俺も今からいっぱい付けたるから」
「待って、ツムくん待って。あぁ!サムくんも蹴ろうとしないで!」
「なんでツムがテンション高いねん……!(名前)……まさか作ったとか言わんよな?俺だけやろ?」


体の下から抜け出したものの、逃がすまいと私の腰にしがみついて膝に顔を乗せている笑顔のツムくんとは対照的に、私の真横にしゃがみ込んで聞いてくるサムくんの顔に笑顔はない……。
一瞬でバレた。ここまで怒りをあらわにされると後ろめたさしかない。
でも部活対抗リレーは体育祭の中で唯一チーム分けは関係なくなるし、1位になったら賞金として部費が出るから勝ってもらいたいし……それでネットとか新品にしたいじゃん。イベントのノリで出場メンバーのうちわ作って応援くらいしたいじゃん……。
とか、ぼそぼそとサムくんに話したら頬をむぎゅっと潰された。


「リレーは勝つに決まっとるやん。ちゅうか、うちわ持っとったんになんで使うてくれへんかったの?もう午後の本選しか残ってないやん」
「……いいんちょが『どうせどこも頭から使ってメインの午後にはヨレヨレになんねんから、1組は午後から使うで!』って言ってたの。部活対抗では使っていいとは言ってたんだけど、ね」
「はぁ……。いいんちょ、応援もマジやったな。忘れとったわ」


私の頬を片手で下から掬うようにふにふにと潰しながらサムくんが喋っていたと思ったら、ぐっと引き寄せられてちゅーされた。
下の方から叫び声と「俺も!」の言葉を拾った瞬間には、一瞬で起き上がったツムくんにもちゅーされていた。
太ももをするすると撫で始めたツムくんを止めさせようと胸を押し返したら、双子にそれぞれ手を掴まれてサムくんも指でつーっとなぞり始める……双子の体で隠れているから誰も気付いてくれない。
気付かれたい訳じゃないけれど、誰か声をかけて双子の意識を私から外してほしい。


「ねぇ……ダメだって……!」
「誰も気付いてへんやろ……まだ時間あるやん。頑張るために(名前)からの応援がほしいんやけど」
「うっ、うちわ作ったよ!」
「応援は誰でも出来んねん。でも(名前)しか出来ひん事、あるやろ?」


耳元で囁くように話しかけるツムくんの指がハーフパンツの裾からゆっくり滑るように入ってきた。
その指先に耐えるように目と唇をきつく閉じれば、背中側のシャツが引き抜かれそうになる感覚に慌てて目を開けばサムくんがシャツをくっと引っ張って抜こうとしている。
少し出たシャツの裾から隙間を縫って、素肌を撫で始めたサムくんを睨めば手のひら全体が背中に当たって上へ伸びてきたからどんどん捲れていく。


「ねぇ、本当にダメだってば!」
「かわええ顔しとる。場所、移動しよか?」
「ここまで俺ら煽っといて終わりなんて酷い事、(名前)はせぇへんやろ?」


さらに顔を寄せてくる双子から逃げようと顔を動かしたら、銀島くんと目が合ったから「双子をどうにかして!」の意味を込めて見つめたら、バッと顔を背けられた。
今度はそれを見て首をかしげた角名くんと目が合う。
双子と私を見比べてニヤニヤしてから、スマホを向けてきた。
……そんな事をするから、皆の視線が一気に集まってしまった。
背を向けている双子はその視線に気付かないから止まらない。
きっと気付いていたとしても止まらないと思うんだけれど、この状況に私が恥ずかしさでどうにかなりそうだから止まってほしい。


「あーアカン。(名前)がかわええ!顔が真っ赤でちょっとトロトロになってるやん。この顔見てええのは俺らだけやからここに居続けるのはアカンなあ……そうやろサム」
「せやなあツム……誰もおらんトコに行かんとアカンやつや」
「リレー……1位になったらじゃ、ダメ?」
「条件にもならへん条件やな」


……昼休み明け最初に行われた部活対抗リレーは、バレー部が見事1位を獲得して賞金も手に入れた。
しかもこのリレーのMVPは双子で、陸上部ですら寄せ付けない走りを披露していた。



|



MAIN | TOP