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宮家の包囲網

買い物からの帰り道、前の方に見覚えのある後ろ姿。
……多分、宮ママだ。
小走りで近付いたら向こうも私に気が付いたみたいで、パァっと明るい笑顔を見せてくれた。


「(名前)ちゃんや〜!」
「宮ママこんにちは。荷物こっち持ちます」
「ええの?あの双子はどっちも手伝ってくれへんかって……見習ってほしいわあ」
「あはは……。あ、今日の夕飯は餃子なんですね」


食べ盛りの双子がいるから、宮ママの両手にあったビニール袋は食材でパンパンに膨らんでいた。
部活が休みだから、双子は家から一歩も出ていないんだろうなって考えていたら、宮ママが双子の文句を言い出した。
……家どころか、部屋から出て来ないらしい。出かける前に出てきたと思ったらテレビを見ながらゴロゴロゴロゴロ……荷物持ちもしてくれないと怒りが止まらない。
家に着く手前で、何か閃いたように宮ママが私を見つめてきた。


「(名前)ちゃん、一緒に餃子作らへん?……帰ってもゴロゴロしとる双子見たら怒ってまいそうやし」
「宮ママと料理するの好きだからぜひ!」
「かわええ事言うてくれはるね〜!ウチの双子が(名前)ちゃんに捨てられんよう頑張ってもらわな……。あんなやけど捨てんとってな?」
「……私からそんな事しないですよ」


玄関に荷物を置きながら会話を続けていると、家の奥からバタバタと足音。
顔を上げると、そこにいたのは驚いた表情のサムくんがいた。
お邪魔しますと声をかければ、嬉しそうな表情とともにぎゅーっと力強く抱き締められてそのまま運ばれそうになる。
宮ママに「治が持つんは(名前)ちゃんやなくてこっちの袋たちや!」って言われて、しぶしぶ下ろしてくれたけれど袋を片手で軽々と持ったサムくんに手を引かれてリビングに通された。
リビングには久々に会う宮パパがいて、笑顔で向かい入れてくれた。


「久しぶりやんな、(名前)ちゃん……エライべっぴんさんになっとるなあ!」
「宮パパも変わらずイケメンさんですね」
「(名前)、俺の方がイケメンやと思うから俺見て?」


覗き込むように私たちの間に入ったサムくんに苦笑い。
……なんで宮パパと競おうとするの。
キッチンに食材を置いたサムくんが今度こそとばかりに私を抱き締めようとしてきたけれど、宮ママが邪魔だとキッチンから追い出してしまった。
不貞腐れたサムくんが私をじっと見てくる……。
とりあえず、今日の夕ご飯は餃子だって伝えたら目が輝いたから意識はご飯にいったみたい。
食材を袋から出し始めた宮ママに何を手伝えばいいか聞いたら、ニッコリした笑顔で見られた。


「…………(名前)がやるんなら俺もやる」
「助かるわあ!やったら治は(名前)ちゃんと餃子の具を作って詰め込んでな?すぐ食材切るから待っててや〜。あ、侑もどうせ部屋でゴロゴロしとんのやったら手伝わせとき」
「ツムはいらん。(名前)と2人でやんねん」


サムくんと手を洗ってお皿を用意したり、餃子の皮を準備していたら、鼻歌混じりに食材を切り出した宮ママ。
楽しそうな鼻歌とリズミカルに食材を切る音が響くキッチン。
その手元を眺めていたら、私の頭に顎を置いたサムくんが後ろから寄りかかってきた。お腹の前で互いの指先が絡み合う。
食材が入ったボウルと餃子の皮を受け取ってテーブルに向かえば、先に座ったサムくんに腕を引かれて膝の上に座らされた。
後ろから手を握り込まれ、肩にサムくんの顔が乗る。


「サムくん、私はここじゃないとダメ?」
「席ないねん。俺の膝しか空いてへん」
「……私にはどこも空いているようにしか見えないんだけど」
「隣はツムんで、正面はオカンとオトンの席や。やからウチでは(名前)の席は俺の膝上やで?」


首にすりすり、頬にちゅーしながら話すサムくんに諭されるように言われた。
……とりあえず餃子の具を混ぜようとボウルに手を伸ばせば、上からサムくんの手が覆うように乗せられる。
色々おかしい。ねぇ、サムくんは何を混ぜようとしているの?私の手しか触れてなくない?
たくさんの言葉を目に込めて、サムくんを見れば「餃子作りええな」って楽しそうに言われた。
そのまま混ぜ終わって手を洗いに2人で立って戻って来ても、私がサムくんの膝上に座るのは変わらなかったから、その体勢のままサムくんと作る事にした。


「(名前)、どうやってそのヒダ作るん?」
「ここをこうやって押さえながら……ほら、そしたら、ね!綺麗にヒダになるよ」
「おぉ……!ほんまやな」
「多分というか、絶対サムくん欲張って乗せすぎだから上手く閉じないんじゃないの?」
「いっぱい肉食いたいやん」


サムくんらしい理由に笑いながら包んでいると「何してるん?」って後ろから不機嫌そうな声が届く。
振り返ると、こちらを見ているツムくんと目が合った。
足音を立てながら近付くツムくんの腕が私の腰にするりと巻き付く……だけど回る腕は痛いくらいに力強くてサムくんの膝の上から抜き取るように抱えられて、私は今ツムくんの腕に座る形で至近距離で見つめ合っている。
お、お邪魔してます……、って小さく言えば後頭部に回った手に引き寄せられてツムくんと唇が合わさった。


「まぁ!治かと思ててんけど、(名前)ちゃんは侑と付きおうてたんか?」
「ちゃうわ!(名前)は俺と付きおうてんねん。大学卒業したら結婚して2人でカフェとかやんねんから」
「何言うてんねん!(名前)はプロになる俺の専属マネージャーやんねん!日本一になったその場でプロポーズして結婚するって決めてんのや。てかなんやねん、カフェって」


双子の言い合いをニコニコと楽しそうに見ている宮ママと宮パパ……。
恥ずかしさでいたたまれない、というか逃げ出したいくらいなんだけれど!
双子は親からの視線なんて気にならないみたいで、ずっと私との将来設計を言い合っている。
双子の将来に私がいるのは嬉しい……嬉しいけれど、自分の親の前で話していて恥ずかしくないんだろうか。
周りを気にしすぎて宮ママたちを見れば、素敵な笑顔で見返されて私は今とっても恥ずかしい。


「ね、ねぇ……餃子、作ろ?」
「せやねん。俺は(名前)と餃子作ってんねんから邪魔せんといて」
「いま邪魔なんはサムの方や!(名前)、このまま俺の膝来よな?ウチでは俺の膝上が(名前)の席やもんな〜一緒に餃子作ろうや!」
「侑も手伝ってくれるんか?やっぱ(名前)ちゃんおると双子が働いてええな!」


あ、あれ?私双子を手伝わせるためにここに呼ばれた……?
確証なんてないけれど、見事に双子を夕ご飯の手伝いに引っ張り込んだ宮ママはさっきよりも機嫌良さそうに料理を再開した。
私を抱えたまま手を洗いに動くツムくんだけれど、普段は指先を使うような料理なんて絶対やらないのに餃子作るのかな。
聞いてみれば「将来、俺と(名前)と俺らの子供で一緒に作んねん!今から練習や、練習」って言われたからその未来を想像してしまって……顔が熱い。


「女の子がええなあ!(名前)に似たかわええ女の子。そんでソファーに(名前)と座ってるトコ写真撮ってな、俺の天使たちかわええやろ〜って世界中に自慢すんねん」
「そ、うなんだ、ね……」
「餃子も皆で作るやろ?それからな他にもあんで、やりたい事!聞く?」


……ただ、餃子を宮ママと作るだけだったのに双子の将来設計を聞かされるとは思わなかった。
しかも、それを宮ママが一番楽しそうに見ていて「(名前)ちゃんがほんまにウチらの娘になるの嬉しいわ〜!……あんたら逃がしたらアカンからな?そんな事なったら家から放り出すで」とか双子を笑顔で脅していて、ちょっとビクっとなる。
……やっぱり双子の母親なだけあって、最強だ。



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