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夏休み……この稲高男子バレー部も例外なく合宿がスタートした。
授業もなく、丸1日バレー漬けの生活にはしゃいでいる2・3年……の相手よりも、過酷な練習と暑さでバテる1年生の介抱に追われた私は夕食の準備と片付けまでバタバタと走り回っていたと思う。
誰もいない広い湯船に浸かって、やっと1日が終わった気がした。
部屋に戻り、布団でごろごろしながらスマホを眺めていたけれど、皆は大部屋で楽しく過ごしているんだろうなぁ……って考えていたら少し寂しくなった。
こういう時の1人っていまだに慣れない。
明日も早いから早く寝てしまおうと布団を思いっきり被った時、トークアプリの通知が入る。
……それはサムくんからのメッセージだった。
すぐに返信すると、着信がきた。


「まだ起きとる?」
「うん」
「そっち行ってもええか?」
「もちろん!待ってるよ」


電話を切ってすぐに訪問者を告げるノックが聞こえてドアを開けると、今さっきまで電話をしていたサムくんがそこにいた。
歩きながら電話してたな……。
部屋の中に戻ろうと背を向けた瞬間、勢い良くサムくんが抱き着いてきたから布団にもつれるように2人で倒れた。
すぐに起き上がったサムくんに腕を引かれて、私は向かい合うように胡座をかいたその上に座らされる。
ぎゅーっと腰に腕を回して抱き締めてくれるから、私もサムくんの首に同じように抱き着いた。


「!甘える(名前)がかわええんやけど」
「……やっぱりこういうところで1人ってなんだか慣れなくて、寂しかったからサムくんが来てくれて嬉しかった」
「俺も(名前)とこうしておれるの嬉しいから両想いやんな」


顔を寄せ合ってサムくんと笑っていたら、さっきまで感じていた寂しい気持ちはどこかに消えていた。
普段だったら恥ずかしさで自分から何か行動を起こす事はほとんどないけれど、合宿だからって事で、私のテンションも人知れず上がっていたみたい。
来てくれた嬉しさから全体重でもたれ掛かっていたら、ごろんと後ろに倒れたサムくんの首筋に顔を寄せて甘えてしまった。
サムくんも顔を私の頭にぐりぐりと強く押し付けてきたけれど全く気にならなくて、お互いされるがままに甘え続けていたら……サムくんのお腹が鳴って笑ってしまった。


「腹減った」
「んー……ご飯食べる?」
「!食いたい!」


立ち上がってサムくんに両手を差し出せば、嬉しそうに握り返してくれて同じように立ち上がった。
他の皆にバレないように、薄暗い廊下を2人で体を寄せ合いながら調理室を目指す。
内緒話をするように顔を寄せて話していたから、耳がくすぐったい。
誰にもバレる事なく無事にたどり着いて、使うところだけ電気をつける。
……皆がおかわりするには少ないかなと思って冷凍しておいたご飯が役に立って良かった。
鍋にお米と、同じ理由から残しておいたスープを投入して、即席の雑炊を作った。
洗い物を増やしたくないから、そのまま鍋をテーブルに運んで2人で囲む。


「飯の時間の中でも(名前)の飯食っとる時間が1番好きやなあ」
「サムくんって、いつも美味しそうに食べてくれるよね……だから私もサムくんに作るの好きだよ」
「(名前)、せっかくやから食べさせて」
「……しょうがないなぁ。はい、あー……ん」


綺麗に完食してくれたけれど、途中からサムくんは自分で食べる事を放棄していた……。
洗い物をして、夜食の証拠隠滅。
食後にお茶を飲んでいたら、持ってきていたスマホがぶるぶると振動する。
画面を見ると、そこにはツムくんの名前が表示されていて、ここで出たらサムくんとこっそり夜食を食べていた事がバレてしまうから……部屋に戻ってから折り返そうと今は見なかったフリをした。
帰りも、行きと同じようにサムくんと体を寄せ合って話ながら歩いていたら私の部屋の前に人影が見える。


「……ツムくん」
「…………(名前)、サムと何しとったん?」
「なんでお前がここにおんねん……トランプで盛り上がってたやん」


肩をぐっと引き寄せられて、サムくんの腕の中に閉じ込められた。
……夜の暗さもあるけれど、ツムくんの表情が見えないし、質問をしただけで他に何も言わないから雰囲気が何だか怖い。
ツムくんは無言のまま私の使っている部屋に入っていった。
そっとドアから中を覗けば、こちらに背を向けて布団に寝転がっている姿が見えて……サムくんと顔を見合わせた。
ツムくん、完全に拗ねてる。



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