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弁当箱の存在に気付いていないツムくんは私の弁当の中身に意識が向いていて、いまだ何を食べたいか悩んでいる。
サムくんの手元を盗み見ると残り少ないのが見えてしまった。せめてバレない内に片付けて欲しい。これは大乱闘になる、食べ物は確実に……。


「(名前)、このハンバーグ食べてもええ?あーでもどれもめっちゃ美味そうで目移りしてまうわ!」
「ありがとう!食べていいよ」
「だから(名前)、あーんしてって」
「……はいはい分かったよ。ツムくんあーんして、ね?」


食べやすいようにカットしたハンバーグをツムくんに差し出すと、美味しそうに食べてくれた。やっぱり2人に何か作って食べてもらうのは好きだな……。本当に作り甲斐がある。
飲み込んで感想を聞いてから私も食べることを再開した。
ツムくんも自分の弁当を食べ始めたし、このまま何事もなく昼休みを終えられそうで良かったと思っていた数秒前の自分を叱りたい。


「(名前)ってやっぱり料理上手いよね。ごちそうさま。また作ってきてよ」
「もう自分食うチャンスないで?全部俺が食うに決まってるやん。今日がラッキーだっただけや。(名前)の優しさに感謝せえ」
「……(名前)、こいつら何の話してるん?サムの手元にあるもう一個の弁当箱、まさか(名前)が作って来たヤツとか言わんよな。俺貰ってないで?」


ここでの選択肢としては、正直に言うか、嘘をつくか、ごまかすか……あー……どれもダメな気がする。
ツムくんの口に今日一番上手く出来た玉子焼きを放り込んで時間稼ぎ……も効果なく、ツムくんが椅子を鳴らして立ち上がった。
これは分けて持ってこなかった私の落ち度だ。この反省は後でしよう。
最優先は今まさに私を飛び越えて掴み掛かりそうなツムくんをどうにかしなくては。
ツムくんの手を握ったら逆に腕を引かれ、すぐ近くのカーテンに一緒に包まれた。驚いて見上げるも目の前のツムくんは不機嫌な表情を浮かべるばかり。


「あのね、ごめんね?ツムくん……分けて持ってこなかった私のミスなの。ちゃんとツムくんの分もあったんだよ」
「言い訳は聞きたない」
「そ、うだよね。明日ツムくんに作って来るから、そしたら一緒に食べてくれる?」
「……(名前)と2人っきりで昼食えるならええで。今回だけやからな、(名前)に免じてあいつら許してやるのは。次はあらへん」
「ありがとうツムくん」


唇を尖らしながら答えるツムくんの頬に両手を添えて、ぐりぐりと手のひらで撫で回す。
目を閉じて受け入れてくれる姿はまるで猫のようで可愛くも見えるけど、腰に回る腕の強さと顔を近付けようとする執念さは可愛いとは程遠く、恐ろしいくらいだけど。
もちろん力で勝てるはずもなく、頬から手を離すと、そのまま取られツムくんの首に腕を導かれた。そっと回すと首筋にかかる息。
首筋から顎、頬と滑るように上がってくる唇に耐えられなくて、無意識に小さな声が漏れ出る。
その声が聞こえない訳がなく、耳元にツムくんの唇が移動して息を吹き込むように話しかけてきた。


「あーかわええ……明日の弁当には愛情たっぷり入れてな?」
「んっ、うん」
「このまま(名前)を堪能したいところやけど、……カーテン越しにさっきからずっと蹴り入れとるサムを黙らしてくるわ」


頬に吸い付いてリップ音を残しカーテンから出ていったツムくんの怒鳴り声を聞きながら、カーテンに包まれていて良かったと心底思った。
耳元であんなこと言われて、赤面しない女の子はいないでしょ……。



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