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人目を盗んで

「……なぁなぁ、これ意味分からん」


授業中、隣から腕を突っつかれたと思ったら教科書がスッと机に流れてきた。
少し体を寄せて覗き見ると、さっき先生が「テストに出す」って言ってた部分。
サムくんを見上げるとアヒル口をしていて、投げ出す数歩手前……くらいの雰囲気をまとっている。
ここで寝られるのは困るけど、今この時間で教えるのは難しい。


「あとで一緒に勉強しようか」
「(名前)が教えてくれるんならする……けど、もう集中力あらへん。無理や」
「頑張って、あと20分だから!」
「もうシャーペンも持ちたないわ」


完全に集中力が切れたサムくんは言葉通りにシャーペンを放り出していた。
こうしている間にも当たり前だけど授業は進んでいて、慌てて板書を書き写す。
私の意識が授業に戻った頃、ノートを押さえていた左手の甲にツーっと何かが走ってびっくりして胸元に手を引き寄せた。
自分の手が置いてあった場所を見るとサムくんの人差し指があって、手の甲に感じた感触の犯人を横目で見ると本人もびっくりした表情をしていた。


「何やびびったわ……」
「それ私の台詞なんだけど」
「めっちゃ動き早かったな。ちょっとオモロかったで」
「びっくりしすぎて心臓バクバクしてます、私は」


ノートに手を戻して前を向いたら、また手の甲をカリカリゆるく引っかいたり、指先をなぞったりサムくんが遊び始める。
好きにさせてたら興味が髪の毛に移ったらしく、耳にかけたり、毛先を指でくるくる巻いたりし出した。
……それだけなら放置してても良かったんだけど、あらわにされた耳に息を吹きかけられた時はストップをかけた。


「サ、ムくんっ!」
「顔真っ赤。かわええ……あ、手繋いでもええか?もう邪魔せえへんから」
「え、うん……」


頷いたらサムくんは嬉しそうに椅子ごと体を近くに寄せてから、骨ばった長い小指を私の小指にするりと巻き付けた。
これ、普通に手を繋ぐより何か恥ずかしい……。
どうにか私の意識が授業に戻った後、先生の隙を見てスマホを取り出したサムくんはインカメラで写真を撮っていたらしく、授業が終わった今その写真を楽しそうに眺めている。
……サムくんの小指とはまだ繋がれたままだ。



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