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ファンサして!

「(名前)ちゃんにお願いがあんねんけど、ええか?」
「それは、内容によりますけど……」
「今度、校内新聞で男バレの特集すんねんけど、今年もやっぱり宮兄弟メインでドーンと載せたいねん!そこで双子の写真撮るのに協力してくれへん?」


新聞部の部長さんに捕まって、どんなお願いをされるのかと思えば、双子の記事を作りたいから撮影を手伝ってというもので。
でも新聞部だったら、私にお願いするよりも部活として普通に申請した方がいいと思うんだけれど……。
部活動時の出入り許可は出るはずなのにって事を伝えたら、それはつまらないから嫌だと一掃された。
え、双子の記事なのに部活風景はつまらないって一体何を記事にするつもりなんだろう。


「この間テレビで男性アイドルのライブ見たんやけど、あれええな〜って閃いてん!」
「あれ、ですか?」
「あれ言うたら、あれやん!ファンサービス!ファンサ!」
「…………それを双子にお願いしてほしいって事ですか?」
「話分かる子で助かるわ〜」
「部長さんが望むようなファンサ、見た事ないですけど……それでも良ければ」


首からカメラを下げているって事は、今からでも撮れるアピールなんだろうな……。
えっと、じゃあ……ツムくんからお願いしてみようかな。
スキップしている部長さんを連れて2組の教室を覗けば、教室の真ん中で輪になって友達と話しているツムくんを見付けた。
呼び出してもらおうと頼む前にツムくんが私に気付いて、あっという間に廊下まで出てきてくれた。


「どうしたん?俺に会いたくなったんか?かわええなあ!」
「あ、あのね……ツムくんにファンサしてほしいな、って思って」


当たり前だけど、いきなりこんな事お願いしたからツムくん困ってる。
顎に指を添えて私と後ろにいる部長さんを交互に見て悩んでいる。
察しの良いツムくんの事だから、もう理解したんだとは思うけど……。
見ていたらツムくんは部長さんの元に歩み寄って、小声で話しかけ始めた。
何を話しているかは分からないけれど、部長さんから何かのOKを貰って私の前に戻ってきた。
目の前に立ったツムくんは私の腕を取って顔の真横に縫い付け、逃げ道を塞いだ。


「……俺のファンサは高くつくで?」


そして高圧的な笑みと共に、顔の前で親指と人差し指をクロスさせて覗き込んできた。
あまりの迫力に動けずにいると、その体勢のままツムくんは部長さんの方へ流し目を送る。
部長さん含め、廊下にいた女の子たちから黄色い悲鳴が上がった。
……色気?というか、なに、もう色んなものがすごすぎて、腰が抜けそうなんですけど。
自分でもいま顔中が熱いのが分かる。
ゆ、指でハートって……!


「侑くんサイコーやで!さっき言われた報酬は用意するから楽しみに待っててな!」
「待ってますわ。……フッフ。(名前)どうやった?その表情見る限りやと見事に俺に落ちたんとちゃう?」
「あ、うっ……そのっ!」
「あーほんまにかわええなあ。こんなに(名前)が意識してくれるんやったら今度からファンサやってもええな〜」


部長さんとツムくんがにこやかに別れる中、私はまだダメージが抜けきれていない。威力がすごすぎた。
腕を引かれて、隣の教室に来たけれどさっきの今でサムくんにお願いさせようとする部長さん、本当に意地悪だと思う。
教室に戻ると席でおにぎりを食べているサムくんがいた。
部長さんに背中を思いっきり押されて、否応なしに目の前に立たされた。
サムくんが頬張っていたおにぎりを飲み込んだタイミングでお願いをしてみる。


「あの、サムくんにお願いが……」
「(名前)からお願いって珍しいやん。俺に出来るんなら叶えてやりたいねんけど、どうしたん?」
「サムくんに…………ファンサ、してほしくて」
「(名前)にファンサ……?」


サムくんも困った表情を浮かべている。
その時、部長さんが後ろからサムくんを呼び寄せてまた小声で話し始めた。
ある程度話を聞いていたサムくんの表情がぴくりと動いて、頷いたのが見える。
話が終わったのか、戻ってきて目の前に立ったまま私を見下ろしたと思ったら、前屈みになって視線を合わせてきた。
近寄った距離に思わず体が固くなる。


「ファンサ……よく分からんからこれで許してな?」


サムくんは指先を自分の唇に当ててから、その指先を私の唇に優しく押し当ててきた。
私の唇に指先を当てたまま、ふんわりと笑みを浮かべた姿に近くにいた女の子たちからまた黄色い悲鳴が上がる。
そんな中、サムくんはふにふにと私の唇を押して感触を楽しんでいる。
「もう大丈夫です」って言いたくても指先が離れていかないから喋るに喋れない。
……なんか、これも、サムくんがやるからこその威力がすごすぎる。


「あー!やっぱり(名前)ちゃんにお願いして正解やったわあ!治くんもサイコーやで!」
「(名前)にしかやらないですけど……(名前)、めっちゃ顔赤くなってかわええ事になっとるな」
「分かっとるて!だから最初に(名前)ちゃんにお願いしにいったんやから。ちゃんと報酬も用意しとくで!あ、また後で(名前)ちゃん写真どれがええか一緒に選んでな?」
「…………はい」


笑顔で帰って行く部長さんと、それにひらひらと手を振るサムくんの姿を見て、終わったんだと実感した。
……だから椅子に崩れるように座ったのはしょうがないと思う。



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