×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




似ている景色……でも今までいた場所と違うことは分かる。
聞こえてくる言葉は、聞き取れるけれど私の使う言葉と違う。
お母さんに手を引かれて、隣の家を目指す。
今日からここで暮らすから挨拶をしに行く、らしい。
私たちの前を歩いていたお父さんがチャイムを鳴らして……出てきたのは綺麗な女の人。
お母さんの後ろにしっかりと隠れながら話が終わるのを待っていただけなのに、お父さんに頭を撫でられたタイミングでその人と目がばちっと合って体が跳ねる。


「やっと顔出してくれたなあ!それにお人形さんみたいでかわええ女の子やね!あ、ウチにも同い年の双子の息子がおるんです。侑、治ちょっと来て!」


ドタドタと駆け寄って来る音と共に姿を見せたのは、……同じ顔の男の子。
互いの親に背を押され、近くで向き合っても本当にそっくりで、瞬きを何度もしてしまった。
ここに来て初めて話すのが男の子だと思わなかったから、言葉が上手く出てこない。
無意識のうちに胸の前で自分の手を握り締めてしまう。
目が合ったまま、どちらも話し出さない時間が続いたけれど、双子が会話を始めた。


「治、かわええ子やなあ!」
「せやな侑。めっちゃかわええなあ……名前聞いたら教えてくれるやろか」
「なぁ、なんて名前なん?あ、俺は侑言うねん!」
「俺は治」
「……えっ、あっ……(名前)、です」
「「かわええな……!」」


同い年なのに、私の周りにいた友達とは全然違う。
双子の話す言葉もやっぱり違ったけれど、向こうではこんなに勢い良く話す友達はいなかった。
それに自己紹介しただけで、あんなに楽しそうにする人も見た事なくて、思わず笑ってしまった。
すごい緊張していたけれど、少し落ち着いた気がする。
そっと目の前にいる双子を見たら、ずっと見ていたのか目が合ってちょっとだけまた体が跳ねてしまう。


「(名前)ちゃんはどっから来たん?」
「えっと、と、東京から……」
「だから俺らと言葉ちゃうねんなー」
「う、うん」
「何も心配いらへんよ!俺らが何でも教えたるから任しとき!」
「(名前)ちゃんはどこの小学校に通うん?お隣さんなら同じとこやんな?」
「そ……うだと思う」
「それは楽しみやな〜俺めっちゃかっこええランドセル買うて貰ったんやけど、見せたる!あ、(名前)ちゃんどんなランドセルなん?後で見せて!」
「かっこええランドセルってなんやねん。俺と一緒やん」
「(名前)ちゃん来て!」


絶え間なく続く会話に、顔を右に左に向けるので精一杯で相づちを打つのでやっとな私の手を掴んで引っ張るこの男の子はどっちだったかな?
ランドセル、確かに私も買って貰って背負った時はテンション上がったけれどここまでじゃなかったと思う。
どうしても見せたいのか、ぐいぐいと私を引っ張る彼に頷くと「侑引っ張りすぎや」って片方が止めてくれて、あ……こっちが侑くんで今声かけてくれたのが治くんかぁと納得した。


「(名前)ちゃん、俺のランドセルも見て?」
「うん……お、治くん」
「!」
「!?治ばっかりズルいわ!」
「あ、あつ、むくん……」


全く知らない場所で会えたのが、この双子で良かった……。
双子に手を引っ張られながら、私はここに来て初めてちゃんと自分の意志で歩き出した。



|



MAIN | TOP