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最強イージス再び発動

部活が終わって皆でぞろぞろと校門まで歩いていたら、ツムくんがぴったりと隣にくっついてきた。
手は双子にそれぞれ絡め取られているのはいつもと変わらないけれど、肩が触れ合うくらい距離が近いのは珍しい……。
何かがあった時はこれくらいの距離はよくあるけれど、今日を思い返しても特にこれといって原因はなかったと思う。
部活も調子が悪いようには見えなかったし。


「ツム、(名前)に近ない?」
「ならお前も(名前)に近寄ればええやろ」
「……ツムくん何かあった?」
「(名前)……しばらく絶対1人になったらアカンから」
「え?」
「俺もなるべく一緒におるし、この際サムでも角名でも銀でも……アランくんたちでもええから絶対誰かとおって」
「さっきから何やねん」
「……俺のクラスにおるバスケ部の奴が(名前)を狙っとるらしい」


ツムくんの言葉にサムくんがぴくりと反応した。
……と思ったら、サムくんもぴったりと隣にくっついてきてた。
双子が左右からぎゅうぎゅうと押してくるから身動きが取れない。
そもそもツムくんのクラスにいるバスケ部ってどの人だろう?
何人かいたと思ったけれど、1人は去年同じクラスだったなぁ。
そこまで接点なかったのに好意持ってくれてたんだ……。
顔を思い出そうと空を見上げたら、ツムくんの叫び声で考え事は中断させられた。


「呼び出されても行ったらアカンからな!無視せえよ!」
「でも、その……私には2人がいるんでしょ?告白されても受けないよ」
「もうそんなかわええ事言わんといて!……ってちゃうねん。男は2人っきりになったら襲う生き物やねん。そんために呼び出すんやから」
「え……そ、そうなのサムくん?」
「ツムの頭がオカシイだけや。皆がそんな訳あらへんから……まぁ俺は(名前)限定でしかやらへん」
「結局襲うんかい!」


帰りのバス内では少しの混雑を理由に前後から抱き締められた。
目の前のツムくんを見上げると、さっきまでの雰囲気とはがらりと変わって、楽しそうなツムくんと目が合う。
しばらく見つめ合っていたら、肩越しからサムくんが顔を覗かせて頬擦りをしてきた。
サムくんに意識を移せば、嬉しそうにさらに擦り寄ってきて頬に唇を押し当ててくる。


「サム、(名前)と近いねん」
「そのバスケ部の奴どうすんねん」
「(名前)に近寄らせる訳ないやろ。……いつまで(名前)にちゅーしてんねん。離れろや」
「(名前)が呼び出されたりでもしたらどうすんねん」
「いつも通り俺が行って丁寧にお断りしてくるに決まってるやん……ってお前ははよ(名前)から離れんかい!」
「あ、着いた。(名前)降りんで」


バスを降りてからも双子はそのバスケ部の話題ばっかりだった。
でも気になったのはバスを降りる直前にツムくんがしれっと言った「いつも通り」って単語。
別に告白されたい訳ではないけれど、たまに、いきなりよそよそしくなる男の子がいて気になっていた事が今解決した。
……双子が何かしたって事だよね。
左右を歩く双子に小さく視線を向けたら、私の頭上で会話をしていたのに、その視線に気付いて同時に見てくる姿に吹き出してしまった。


「どうしたん?」
「随分かわええ顔で笑てんなあ〜何があったんか俺にも教えてや」
「ううん……いや、あのね、本当に2人がいる事が当たり前なんだなぁ〜って思って」
「今さらやん、そんなん。俺らがバレーボールやるくらい当たり前の事やで!な、サム」
「せやな。なんでそんな考えになったん?」
「だってさっきツムくんが私への告白断ってるって言ってたから。しかも、いつも通りって、断ったの1回じゃないんでしょ?」


その言葉を聞いたツムくんは、少し考えた顔をした後に嬉しそうにぎゅーっと抱き着いてきた。
どうしたのか聞いたら「ちゃんと私を守ってて偉いでしょ」って事らしい。
……疑問として聞いただけで、お礼を言った訳でも代わりに断った事を褒めた訳でもなかったんだけれど、ツムくんはそういう風に受け取ったみたい。
ぐりぐりと顔を押し付けてくるツムくんがなんだか可愛くて少し顔を寄せたら、そのまま唇を塞がれた。
身動きが取れなくて息も苦しくなった時、やっと離れてくれたと思ったらサムくんに頭を鷲掴みにされて押し戻されているツムくんがいた。


「盛んな、クソブタ」
「ハァ!?お前に言われたないわ!バスん中でずっと(名前)にちゅーしよって!自分の事棚に上げすぎとちゃうか!?」
「ア゙ァ!?そもそもお前がちゃんと牽制しとらんからバスケ部の奴が(名前)ン事好きになったんやろうが!(名前)に変なモン近寄らせんな!」
「ちょっ、ここ外だか、」
「だからいっっつも身の程知らずのポンコツ共に現実叩きつけに行ってるやろ!」


もうちょっとで家に着くのに、こんなところで喧嘩するなんて……!
呼びかけてもダメだった。
繋がれている手に力を込めても、腕を振ってみても効果がない……。
頭を押さえたままで顔が近かったから、もうヤケになって頬にちゅーでもしてやろうと勢い良く背伸びしたら、振り向いたタイミングと重なって唇が合わさった。
私自身もだけど、された方もそれを間近で見てしまった片割れも驚いている。
……私からちゅーする事なんてなかったから。


「……か、帰ろうよ」
「…………あ、せや、な」
「なぁ、(名前)俺にもちゅーしてや」


自分からするのがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。
家までのわずかな距離、ちゅーされなかった片割れにねだられたけれど今日は本当に無理。顔見れない。
双子だから一応同じ顔してるんだもん、恥ずかしすぎる。
拗ねる前に、明日の朝頑張るから今は勘弁してとお願いして家の前で別れた。
……明日は寝不足かもしれない。



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