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告白大作戦!?

朝練が終わって昇降口に行った時、先に下駄箱に手をかけていたサムくんが中を見たまま立ち止まっていた。
どうかしたのか横から覗いたら、上履きの上に小さなメッセージカードが置かれている。
サムくんはそれを手に取って文面を読んでため息をこぼし、そのカードを私に見せてきた。


「放課後に来てほしい言うても部活あんねんけど」
「……名前は、書いてないね。でも時間は取らせないってあるけど」
「それに俺には(名前)がおるっちゅうのに……なんやねん」
「私、こういうの初めて見た……書いた事もなかったし」


私にカードを預け、教室に向かう間、サムくんは一切の興味を見せる事なくパンを頬張っている。
下駄箱に入れた人には申し訳ないけれど、サムくん宛のカードをもう一度見てみる。
これを書いて下駄箱に入れるだけでもかなりの勇気がいるんじゃないかなって思う。
サムくん自身の問題だから、私から行きなよとは言えない……でももし私が同じ事をして相手が来てくれなかったらショックかも。
それ以上に、告白だとしてサムくんがこのカードの子と付き合う事になったら普段みたいにお話とか出来なくなるって考えたら……寂しい。
って、それとなく隣を歩くサムくんに言ってみたら廊下の壁に押し付けられた。


「……(名前)めっちゃかわええ事言うてくれるやん。ほんまに(名前)好き。俺、(名前)以外とは付き合えんから安心してな」
「行く、んだよね?」
「(名前)からの呼び出しなら行くんやけど……あ!なぁ、(名前)も俺にコレ作って呼び出してくれへん?」
「え?」
「作った事ない言うてたやん?(名前)が作った呼び出しカードほしい。めっちゃほしい」


私の手の中にあるカードを見ながら、そんな事を言ってきた。
まさかの発想に、瞬きを何度かしてサムくんを見つめる。
書いて書いてと催促してくるサムくんを宥めて、教室に向かったけれど着席してからもずっとその話題で、私に呼び出されたらどんな感じなんだろう……とか色々考えていて楽しそう。
会話が聞こえたであろう角名くんが「え?」みたいな表情で後ろを振り向いた。
……会話だけ聞いていたら、告白のためにサムくんを呼び出したいけれど、それを本人と相談しているように聞こえるもんね。


「(名前)なら俺呼び出すのに何て書いてくれるん?」
「え、何て書けばいいんだろう……やっぱりそのカードと同じ事書くのかなぁ」
「ならこれ声に出して読んでくれへん?あ、やっぱり放課後、私のとこ来てって言うて。部活同じなら(名前)は体育館に呼び出すと思うんやけど」
「えー……まず呼び出さないと思うんだけど」
「で、俺ン事ずっと好きやった言うて、そしたら俺もって返事してハッピーエンドになんねん」


続く会話から色々察した角名くんがニヤニヤしながら「お幸せに」とか言ってくるから前を向いてとお願いして、サムくんにはやんわりと断りを入れる。
それで諦めてくれる性格だと良かったんだけれど、いよいよ放課後になった時、サムくんは「戻って来たら絶対に言うてな。真っ先に(名前)んとこ行くから」って念押しをして出ていった。
部活の準備をしていて、あと5分経ってもサムくんが来なかったら遅れるって伝えようかなって考えていたら、体育館に駆け込んできたサムくんが私の元にダッシュで近寄ってきた。


「(名前)、ちゃんと行って来たで。やから(名前)はよ俺を呼び出して告白してくれへんか」
「遅れといていきなり何言うてんねん、サム。てか(名前)からの告白ってなんやねん。俺にも言うてや」
「ツムは何もしとらんやろ。俺へのご褒美やねんから邪魔せんといて」


言い合いを横目に、スクイズボトルが入ったかごを持ち上げて歩くと、それに気付いたサムくんが後ろにぴたりと寄り添ってついて来た。
顔を覗き込みながら期待した目で見つめられて……これは私が折れるしかないかなぁ。
双子の会話が聞こえていた人は、聞こえてくる単語に何だ何だと私たちを見てきた。
これ以上騒ぎになる前にサムくんのお願いを叶えよう。


「……宮治くーん。放課後になったら私のところに来てくださーい」
「!俺呼び出したん、自分?……好き。付き合うて」
「ちょっとそれはいきなりすぎじゃない?」
「(名前)が呼び出してくれたん思たら気持ちが先走りすぎたわ。続きやって」
「はいはい……えっと、治くんの事、ずっと前から好きでした。ご迷惑でなければ私と付き合ってください」
「絶対付き合う。ずっと大事にするから俺と結婚しよ」


飛び付くように抱き着かれて、頬にちゅーされた。
かごを抱えたままだったからされるがままだったけれど、サムくんの後頭部に思いっきりバレーボールが当たって、その反動で転ぶサムくんに当然ながら巻き込まれる。
ツムくんの叫び声が聞こえた時にはサムくんと床に倒れていた。
しかもスクイズボトルも派手にばらまいて、最終的に北さんに怒られた。
「なんでサムばっかり」と怒るツムくんにこうなった経緯を話したら、俺にもしてとねだられて……頼まれたからとは言えまさか1日のうちに2人に告白する日が来るとは思わなかった。



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