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我慢出来ない

ご飯も食べ終わった昼休み。
トイレから戻って来たら廊下にツムくんがいるのが見える。遠くからでも目立つなぁ。
自分の教室に帰るのかと思って見ていたら、目が合った瞬間に上からのし掛かるように抱き着いてきた。


「重っ……!潰れる」
「(名前)への愛の重さやで〜」
「さすがに70kgオーバーは立っては支えられないから」
「なら俺が(名前)を支えたるから、腕の中に勢い良く飛び込んで来たらええ!」


そう言って少し距離を取って腕を広げて待つツムくんを見る。
すっごい楽しそう。
勢い良くは、何かの拍子に怪我させたらとか考えちゃって、ちょっと怖いから出来ない。
とりあえず飛び込んでおくけど……。
頷いて、行きますアピールをしたら笑顔が輝いた。
トトトって小走りをしていたら、突然現れた壁にぶつかった上に浮遊感も襲ってきて、慌てて目の前の何かにしがみつく。


「……教室出よう思たらかわええ子が飛び込んできたわ。これは俺へのプレゼントやろか?頑張ってたらええ事あるんやな」
「お前にちゃうわ!なんでこのタイミングで出てくんねん!どんぴしゃりか!それはバレーだけでええやろ」
「サムくん……びっ、くりしたぁ……!ねぇどこも痛めてない?思いっきりしがみついちゃってごめんね」
「(名前)を支えるくらい訳ないで?もっと抱き着いてええよ」


ぶつかった時に片腕で抱き上げられたみたいで、私は今サムくんの腕に座っている。
しがみついた何かは制服だったようでシワになるくらい握り締めていた。
降ろしてアピールをしたのにしっかりと抱え直される。
……あ、サムくんに見上げられるのなんか新鮮。
じっと見つめ合っていたら、ツムくんがこの状況を黙って見ている訳がなく、腰に腕が回って引き剥がそうとしている。


「さっさと(名前)寄越せや」
「さっきまで(名前)に引っ付いてたやろ」
「!やっぱりお前わざと教室から出てきたんか!」
「知らん。……なぁ(名前)、ちゅーして?」
「へ?」
「ア゙ァ!?何言うとんねん!」


双子のやりとりを見ていたら、サムくんから突然の要望に変な声が出てしまった。
脈絡がなさすぎてびっくりしている私と、喧嘩腰で掛け合うツムくんの声が廊下に響く。
学校でなんて事を言い出すんだと、首を横に思いっきり振って無理だと伝えたけれど、サムくんも同じようにブンブンと首を横に振って私のアピールを否定している。
むしろどうしてその発想になったのか教えてほしい……。


「近くで(名前)の唇見てたら、めっちゃぷるぷるしとってええなあ思てん。なぁ、なんでアカンの?」
「それは、あの、恥ずかしいから無理……」
「やったら誰もいなかったらええの?」
「そんなん移動するだけやん」
「……なんでツムまでちゅーしてもらおうとしてんねん」


双子が目を見合わせている。
少しの後、双子の中で何かが決まったらしく、私を抱えたまま廊下を駆け抜ける。
奥へ移動していく度に、だんだんと人がいなくなり、選択授業でしか使わない教室が集まっている静かな階段の踊り場まで連れて来られてやっと床に降ろされた。
けれど、すぐさまツムくんに手首を掴まれて、サムくんは私の指先を絡め取ってそのまま私の顔横に自分の腕をついたから距離が……近い。
何かを言う間もなく、サムくんはそのまま流れるように唇を塞いできた。


「ん。もっとかわええ顔になったなあ。俺らしか知らん(名前)のめっちゃかわええ顔」
「背けたらアカンって。もっとそのかわええ顔見せてな」
「ツムく、まっ……、んんっ」
「なぁ、痕付けてええ?ここに」

ツムくんに唇を塞がれて何も答えられないのを良い事に、サムくんは私の首筋をぺろりと舐めたり唇でやわやわと皮膚を挟んだり遊んでいる。
「待って」って言おうとしたら、ツムくんの舌が入り込んできて結局そのままサムくんに思いっきり吸い付かれたし、息が整わない私を見てツムくんにも噛み付かれてキスマークを付けられた。


「待って……って言ったのに」
「言うてないやろ?(名前)、俺とのべろちゅーで気持ち良さそうにしてたやん。かわええ声はたくさん聞こえとったけどな」
「俺も言われてへん……かわええ声しか聞いとらんで」


何か言い返そうと思ったら、予鈴が鳴った。
その音に反応したのは私だけで、双子は一切私から目を離さずじっと見つめている。
……近付いてくる顔にぎゅっと目を閉じて、唇にかかる息に身を固くした遠くで本鈴が鳴った気がした。



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