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選択肢は?

「宮ンズの事、ほんま頼むわ……赤点回避せんと合宿には連れて行けへん。でも言うたところで素直に勉強なんかせえへんやろ?」
「そ、うですね……」


――……少し前の監督との会話を思い出して、無意識にため息がこぼれた。
前回の結果を受けて、部活が禁止になる1週間前からでは間に合わないと判断した結果なんだろうけど……。
昼休みと、帰宅してからのほんのわずかな時間でどうにかなるのか考えたら現状はかなり絶望的だと思う。


「サムくん、問題文よく読んでみて」
「?…………あ」
「もったいないよ、せっかく答えられる問題を落としちゃうなんて」
「……問題作った人、性格悪すぎるんとちゃう」


腕を枕にして机に顔を伏せちゃったサムくんの頭を撫でると顔だけをこちらに向けた。
手を休めると、もっと撫でてと言わんばかりに頭を手に押し付けて来たから撫で続ける。
あ、目閉じちゃったからこれはダメだ。
体を揺すると、とりあえず体は起こしてくれたけれど、もう勉強はしたくなさそう。
どうしたものか考えていると、サムくんが抱き着いてきた。


「サムくんはよく抱き締めてくれるよね」
「(名前)ン事大好きやから出来るんならずっとくっついていたいねん」
「ありがとう。……でもさっきサムくんが問題文を読まないで間違えたの、例えるなら、目の前に私がいるのに他の子選んだのと同じ事したんだよ」
「!?嫌や!絶対嫌や!俺は(名前)選ぶ!」
「うん。じゃあ次からはちゃんと読んで答え選べるよね?」
「絶対(名前)選ぶ。やから(名前)も俺選んでな?」


その言葉に頷くと、頬にちゅーされた。
やる気スイッチが入ったみたいで、またプリントと向き合い始めたのは良かったんだけど、だんだんと表情が曇り出す。
どうしたのか見ていると悲しそうな顔でこっちを見てきて、狼狽えてしまう。
一緒にプリントを覗き込むと、さっきより痛いくらいに抱き着かれて何度も名前を呼ばれた。


「ど、どうしたの?」
「ちゃんと問題文読んでも答えが全く分からへん……(名前)選びたくても選ばれへん。どないしよ……」
「さっきのは記号で答える問題だったからね……これは自分で書かないといけないから、もう少し知識を増やさないと」
「俺は(名前)を選ばれへんの?目の前に(名前)がおっても他のやつ選ばんといけないんか?」
「……ちゃんと選べるように一緒に勉強しようね」


慰めるように背中を撫でると、おでこを合わせてきて、ぐりぐりされた。
……例え、失敗したかなぁ。
問題文に一喜一憂してたら解けるものも時間オーバーで解けなくなっちゃう。
どうやって教えるのがいいのか考えていたら、間近にいたサムくんが唇を突き出して顔を寄せてきたから慌てて顔を引いた……引こうと瞬間、体が後ろに引かれてバランスを崩した。


「……なにすんねん」
「それはこっちの台詞や!なに教室内でナチュラルにイチャついてちゅーまでしようとしてんねん!」
「ええやろ別に。ツムは目の前に(名前)がおんのにちゅーしないんか?」
「そんなん、するに決まってるやろ!」
「……あの、ごめんね、この体勢そろそろきつい」


私を後ろに引っ張ったのはツムくんで、体に寄りかかってはいるし抱き締められてもいるんだけど、腹筋が悲鳴を上げそうだ。
そのまま元に戻してくれたら良かったのに、ツムくんは私を抱きかかえてそのまま席に座ったから、今なぜか私はツムくんの膝の上に座っている。
見上げたら頬擦りの後にちゅーっと音を立てて耳に吸い付かれた。


「で、(名前)はサムと何してたん?」
「テスト勉強だよ」
「それで何で抱き合ってちゅーにまでなんねん!保健体育の勉強でもしてたんか!?」
「ちゃうわ。俺が(名前)を選んで、(名前)も俺を選んでくれた結果や」
「ハァ!?」
「あー、例えの話だからっ!」
「……でも(名前)は俺選んでくれる言うたから俺のやんな?」


膝の上に座らされてから、サムくんは一気に不機嫌になりながらも私の両手を掴んで自分の方にぐっと寄せようと引っ張っている。
それが分かっているから、お腹に回っているツムくんの腕の力もだんだんと強くなって、食い込んで苦しい。
このままじゃ勉強どころか、喧嘩になってもおかしくないくらいに双子の醸し出す空気がピリピリしている。
交互に顔を見ていたら、ツムくんの大きな手が私の頬をむにっと掴んで、しっかり目が合うように顔を持ち上げる。


「(名前)は俺の方がええやろ?サムやなくて、俺を選ぶやんな」
「無理矢理(名前)に言わすなアホツム。……(名前)はツムより俺の方がええ言うたもんな?」
「……今ならこの状況をどうにかしてくれる人がいいかな。それからツムくん人のほっぺたで遊ばないで」
「え〜やってめっちゃ柔らかくて気持ちええから触りたくなんねん。あとな、(名前)が俺選べばすぐ収まんで」


ツムくんの言葉にサムくんがぴくっと反応して、握ったままの私の手を力強く握りすぎている。
……今日はもう何言ってもこの話題にしか着地しないんだろうなぁ。



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