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身に纏ってほしい

「……あ」


私を抱き締めていたツムくんが離れたタイミングで、カツンと小さい音が聞こえて足元を見たらブレザーのボタンが落ちていた。
私のかと思ったら外れている部分はなくて、隣で同じように確認していたツムくんのブレザーを見ると1つなくなっていた。
時計を確認すると付け直す時間はまだ余裕はありそう。
ツムくんに手を差し出したら、ぎゅーっと手を握ってきたのはびっくりしたけれど。


「ブレザー貸して?ボタン付けるよ」
「ほんま!?やってやって!」
「(名前)、ツムに構いすぎ……俺もおるから付けんの後にしてや」
「なんやねんサム!せっかく(名前)が俺の付け直してくれんねんから邪魔すんな」
「今から針使うんだから抱き着かないのっ!危ないでしょほら離れて!」


本当に危ないから双子に注意したら少しだけしゅん……とされた。
付けている間にそわそわしている双子が見えて、小さく息を吐き出す。
付け終わるタイミングを計ってるんだろうなとは思うけど、抱き着いて来ない代わりに距離が詰まってきた。
糸を切って、ボタンがちゃんと付いたかの確認をして、裁縫セットを仕舞ったら両サイドから勢い良く飛び付かれる。


「(名前)終わったん?もうええやろ。離れてなんて言わんといて!」
「もう(名前)怒っとらん?でも動かんからぎゅーってしてたいねん。やから次は許してな」
「あー……、ごめんね」
「!なぁ、(名前)俺のブレザー着てくれへん?」
「え、ブレザーを?何で?」
「ええから!めっちゃ見たいねん!」


体を揺すって催促してくるツムくんに折れて、立ち上がって自分のブレザーを脱いでからツムくんのものに袖を通す。
当たり前なんだけど、袖とか丈とか色々と合わない。
手はちゃんと出ないし、スカートもかなり隠れる。
改めて身長差を実感した。
これでいいのかツムくんを見たら、ガン見されてて……反対側のサムくんからも同じような視線をもらう。


「えっ、と……大きいね?」
「アカン……これはアカン」
「……アカンな。色々とアカン」
「もういいかな、脱いでも」
「!?まっ、まだ着てて!かわええ……俺のブレザー着とる(名前)がほんまにかわええんやけど!どないしよ!」
「(名前)、次俺のジャージも着て」


話しかけたら語彙力がなぜかなくなった双子がいて、脱いでいいか聞いた瞬間、ツムくんから抱き締められた。
サムくんは鞄からジャージを引っ張り出して私に手渡してくる。
今のこの格好が双子のツボに入ったのは分かった。
試合くらいテンション上がっているもん。
双子からジャージを着せられるのは頻繁にあったけれど、ブレザーを着るのは初めてだからドキドキ、する。


「ブレザー、次の時間に取りに来るから、授業中に着とって!」
「ちょっ、ツムくん!?」
「(名前)また後でな〜」


教室を出ていったツムくんを引き止められず、ドアを眺めていたら後ろからブレザーを脱がされて、ジャージが肩からかけられた。
確認するまでもなく、サムくんのジャージなんだけれども。
……双子だから洗う時の洗剤は同じなのに、制汗剤とかの違いで香る匂いが違うから、本当にいつもドキドキするんだよね。
いきなりだと、ふわっと香ってくるから心臓に悪い。
いや、抱き締められた時もそうだけど!
双子は服装に弱いのかもしれないけれど、私は匂いに弱いのかなぁ。


「顔真っ赤でかわええよ。どうしたん?」
「……もしかしたら私は匂いに弱いのかもしれないと自覚しちゃった瞬間、どうしていいか分からなくなっているところ」
「ええ事聞いてもうた……このまま抱き締めたら(名前)は俺ン事意識して大変になりそうやな……なおさら抱き締めるんやけど」
「うっ……言葉にしたら余計に恥ずかしくなってきた」


さすがにジャージ羽織っての授業は無理だからって返したら、サムくんが使っている制汗剤を首元に吹きかけられて同じ匂いをダイレクトにまとう事になってしまった。
落ち着かない……。



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