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自習の醍醐味

急遽、自習になった最後の授業。
ありがたい事に課題も少なかったから、早々に終わらして自由な時間を過ごす人たちで小さくざわついている中、前の席にいる角名くんが振り向いて話しかけてきた。
サムくんはプリントとにらめっこをしていたけれど、休憩とばかりに全てを投げ出す。


「ずっと気になってたんだけど、いつも治は侑と(名前)取り合ってんじゃん。でもあれはいいの?(名前)が侑のケアで付きっきりなのは」
「いいわけないやん。でもしゃーないねん。ルーティンなんやて。あの時間邪魔するとめっちゃ調子落としよる……ただのポンコツになるでアイツ」
「邪魔したことあるんだ」
「そらオモロないやん。我慢しとるだけや。いつだったか話しかけたアホがおんねん。最悪だったわ……サーブはホームランするし、タイミング合わへんで試合ガタガタやった。やから終わるまで話しかけたらアカンねん」
「ちょっと見てみたい気もするけどね」
「…………(名前)もあの時間好きやから邪魔したらアカン」


その話題に苦笑いしか出来なくて聞き役に徹していると、サムくんが抱き着いて頬擦りをしてきた。
どうしたのか聞いてみると「我慢してた分甘やかして」との事で、好きにさせようとしたタイミングで私のスマホが振動した。
スマホを取り出すとサムくんも一緒に覗き込んできて、画面を睨んでいる。
見るとツムくんからのトークが表示されていて「暇。(名前)不足でアカン」の文字。
……そっちは授業中じゃなかったっけ?


「ツムくん暇だって。何か写真送ってみる?」
「(名前)インカメラ起動して」
「あ、3人で撮る?自習中だよって。私の腕の長さで収まるかな」
「スマホこっち持とうか」
「ありがとう角名くん。じゃあもっと寄って……はいチーズ」


撮り終わった写真を3人で見返すと、小さな画面いっぱいに写った私たちがいて、どう見ても互いに寄りすぎてて笑ってしまった。
こっちは自習中だよの文字と共に写真を送れば一瞬のうちに既読がついて、3人で返信を待つ。
すると「あいつら近すぎ。(名前)だけの写真がええ」って返ってきた。
自撮りして送ろうかなって考えてたらサムくんにスマホを取られて、何をするのか見ていたらそのまま自分の写真を撮っていく。


「ツムに(名前)の写真送らんでええよ。俺の自撮り送っといたわ……あ、俺と一緒に撮ろか」
「いいよ、撮ろうか……あ、返信……いらんわっ!だって。まだ私の写真催促されてる」
「俺とのツーショットならいくらでも送ってええで」


サムくんが構えたスマホに収まるように近寄ると、嬉しそうに顔を寄せてきた。
何枚か撮ってどれを送るのかと思って見てたら全部一気に送っている。
多分ツムくんアプリ開きっぱなしだと思う。だって送った先から既読ついてるもん。
返ってきた文字を読むと「(名前)はかわええけど、さっきからサムがいらん」とか続々と返事がくる。
今さらだけど向こうの授業は大丈夫かな?
テスト前にどうなっても知らないんだから。……見捨てないけど。


「自撮りはあまり得意じゃないんだけどなぁ……」
「え、そんなかわええ(名前)送ったらアカンって。俺にちょーだい」
「う、うん……送るよ」


授業が終わる直前に自撮りを送ったら、既読がついただけで返事がなかった。
……それはそれで恥ずかしいんだけど。
放課後になって皆で教室を出ると、ちょうど隣もHRが終わったらしく、ぞろぞろと教室から出て行く生徒の中に銀島くんを見付けた。
でもツムくんの姿がなくて首を傾げてたら、どうやら今ツムくんは担任から注意を受けているらしい。
あ、やっぱり授業中のスマホがバレちゃったかな。……申し訳ない。


「さっき侑、授業が終わる直前にいきなり変な声上げよって……めっちゃオモロかったんやけど、それで今怒られてん」
「ダサ」


出てくるツムくんは怒られて拗ねてるのかと思ったんだけど、見たらそんな事もなくて何だか笑ってるというか……ニヤニヤしてる?
目が合って一直線に駆け寄って来たツムくんにぎゅうと抱き締められる。
怒られた後なのにテンション高めだ。
それでもスマホ触ってて怒られたと思ったから謝れば、きょとんとした表情が返ってきた。


「あれ、スマホで怒られたんじゃないの?」
「ちゃうねん!あんな、最後に来た(名前)の自撮りがめっちゃ可愛いすぎて声出してもうた!」


……これは、私のせい、なのかな?やっぱり謝っておこう。



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