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惚れた病に薬なし

「(名前)、俺にもちょーだい」
「はい」
「その手に持っとるやつがええ。あー……ん」


休み時間にポッキーを食べていたらサムくんが欲しいって言ってきて袋を渡したら、口を開けて催促してきた。
差し出したら、私の手からぽりぽりぽりぽり食べ進めていく姿が可愛くて、もう一本差し出したら同じように食べていく。
もう一本もう一本とあげていたら背後から首に腕が回り抱き着かれて、不満そうな声が顔の真横から聞こえてきた。


「(名前)、俺にも」
「ツムくん……はい。どうしたの?」
「教科書借りに来たら、(名前)がサムばっか相手にしとって楽しない」
「どの教科?早くしないと休み時間終わっちゃうよ」
「やってここで2人っきりにさせたらイチャイチャし出すやん絶対。それはアカン」
「……はよ帰れや、隣の教室に」


悔しそうな声と共に首に回る腕に力が入っていく。
腕を数回叩くと力が緩まったけれど、戻りたくはないようだ。
何の教科書を忘れたのか聞けば、それはロッカーに入れている教科で探しにいかないと渡せない。
サムくんにポッキーを袋ごと渡して、首に回る腕をそのままに立ち上がったら双子のリアクションが逆になった。
ロッカーを漁っている時でも頬をすりすりと寄せて来るツムくんがどんどん前のめりに体重をかけるから、ロッカーに体ごと突っ込みかけているし、頭はロッカー内にほとんど押し込まれた状態になっている。


「(名前)、ちゅ〜〜」
「んーっ!?いった!」
「派手な音したなあ〜」
「だってびっくりしたから……」
「エヘヘ。あんま構ってくれへんからちゅーした」


ロッカーに頭を突っ込んだまま、身長差を存分に活かしたツムくんが後ろから唇を押し当ててくる。
それに驚いて距離を取ったら見事にロッカーに打ち付けてしまった。
ぶつけた頭を撫でながら心配はしてくれているけれど、また顔を近付けて来る。
背後から来るから上手くガードも出来ず、迫るツムくんに反射で目を閉じていたらスパンッと軽い音が響いた。


「いったいねん!なんやサム邪魔すんなや」
「俺の教科書貸したるから帰れ」
「(名前)に会いに来とんのに何でお前から借りなアカンねん!」
「お前ははよ(名前)のいない隣のクラスに帰れ」
「うぐぬっ〜〜……はいはい帰ればええんやろ。じゃあ帰るわ」
「……え?」
「何で(名前)と手繋いでんねん!お前一人で帰れや」


珍しく素直に受け入れたなぁって見てたら、指先を絡め取られて一緒に歩いていた。
それに素早く反応したサムくんが反対の腕を掴んで引き寄せようとしている。
ちょっと待って……普通に痛いんですけど!
握られている手も腕も、引っ張られているから間接も悲鳴を上げている。
双子はムキになって互いに引っ張るから収拾がつかなくなってきた。


「もうっ!そうやってすぐ引っ張らない!」
「「(名前)はどっちがええの!?」」
「そんなの俺に決まっとるやろ!」
「教科書忘れる奴を(名前)が選ぶ訳ないやん」
「そこの3人もうチャイム鳴ってんで。侑は隣の教室やろ?2人は席つけー。終わったら職員室な」


……普通に説教された職員室からの帰り道、先を歩く双子の背中を見ていたら曲がり角でサムくんが振り向きざまに顔を寄せて来て、一瞬のうちに唇を塞がれた。
先を行くツムくんはまだ気付いてない。
小さく笑うサムくんに頭を撫でられ、その手は私の指先を包み込んだ。
口を開いたら人差し指が私の唇に当てられて言葉を遮る。


「……とりあえずツムにバレるまでは(名前)を独り占めさせてな?」



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