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最強イージス発動

明日は練習試合だから何か差し入れをと思って、夜のうちにレモンの蜂蜜漬けを仕込んだ。
部員全員分は人数が多くてさすがに無理だけど、試合に出る選手が一通り食べられればいいかなと思ってレモンを輪切りにしていく。
……大きなタッパー2つ分あれば大丈夫、だよね?


「おはよう!」
「「おはよう(名前)」」
「なんや今日は荷物多いなあ。持とうか?」
「ありがとう、でも重くないから大丈夫だよ」


練習試合は稲高が迎える側。準備を終えたタイミングで、監督に断りを入れて対戦校の迎えに行った。
しばらくするとバスが見えて、相手校の監督・コーチにご挨拶。
案内している時に向こうの人たちに次から次へと話かけられたのは少し怖かった。
やんわりと断りながら案内を終えてベンチに落ち着く。
ウォームアップを見てて思ってたんだけど、試合が始まってその疑問が確信に変わる。
……今日、双子の調子が良すぎない?
動きがキレッキレで相手が手も足も出ない。相手校だってそこそこの強豪なのに。
1試合目は圧倒的大差で稲高が勝った。


「あ、次の試合までに皆さんどうですか?差し入れでレモンの蜂蜜漬け持ってきました」
「おぉ……!まさに運動部って感じやな!」
「まさか尾白さんがそんなに感動してくれるとは思いませんでした」


クーラーバッグごと両手を差し出せば、バッグを越えて双子に手を掴まれた。
受け取ってくれるのかと思ったけれど、そうじゃなかったみたいで周りの皆も困惑している。
ツムくんが目もくれずバッグを取ると、近くのベンチに置いて自由になった私の手を握り締めた。
……あれ?双子ってレモンの蜂蜜漬け好きじゃなかったっけ?前は我先に食べてたイメージしかなかったんだけど味覚変わった?
そんなはずはないんだけど、一切の興味を見せない。


「……エライかわええ差し入れを貰たなサム」
「せやなツム。やけど次の試合までとか時間短すぎひん?堪能しきれないで」
「え?あれ、ちょっと待って!?差し入れそっち!クーラーバッグの中身だけ!私違うからね!?」
「え!(名前)ちゃうの!?取ってください〜的に腕差し出してたやん」
「してないしてない!」
「でももう貰てしまったから返品出来へんけど」
「いや、もう(名前)は俺らのやから気にする事なんて何もあらへん」


今回に限っては双子の発想がぶっ飛びすぎてて焦る。
割りと普通なテンションで言ってきてる辺り、皆が少し引いている。
助けを求めて視線をさ迷わすと、誰も目を合わせてくれなかった。
……黙々とレモンの蜂蜜漬けを食べている。
指先が絡んで手が双子と繋がる。
そのまま近かった距離がもっと近くなった。
体育館に人数だっているのに、その喧騒が全く入ってこない。


「(名前)は俺らを堪能したくないんか?」
「(名前)だけやで?贅沢に俺らを堪能してええのは」
「……た、堪能って」
「あーんな事とか、」
「こーんな事とか……」
「「心行くまで好きにしてええんやで」」


耳元で喋られて、息がダイレクトに耳に吹き込まれる。
……この双子、今絶対に楽しんでる。だって声が楽しそうだもん。
そうと分かっていても、ぶわぁっと顔中に血液が集まってる気がして俯いた。
覗き込むように顔を見てくる双子はそのまま頬に唇で触れてくる。
避けようと思って顔を背けても、挟まれているから右からも左からも唇が追ってくる。
しかも少しずつ顔の中心に唇を滑らせてくるから、いよいよ顔も動かせなくなってきた。
今動いたら双子に自分からちゅーしたみたいになる。


「真っ赤になってもうたな」
「びっくりする程真っ赤やな」
「かわええ」
「かわええな」
「きょ、今日どうしたの、何か激しい、色々と」
「……俺ら相手に練習試合を申し込んで来て大切な可愛ええマネージャーに声かける奴らが近くにおんねんで?離れる訳ないやん」
「さっきの見られてないと思っとった?試合でボッコボコに潰してやったけどそれじゃ足りんかったから牽制してるだけや」
「「俺らの(名前)に近寄んなって」」


あ、体育館までの間に話かけられたの見られてた。
飛び出すところを北さんに止められたから絡まなかっただけで、限界に達していたみたい。
その話題を出した瞬間に、さっきまでの空気が一変した。
視線だけで何人か殺せそうなくらい双子が相手校を睨んでいる。
……試合に負けることはないと思うけれど、勝ったところで機嫌が上向きになるとは思えない。
終わったらとことん双子に付き合おう。



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