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朝一番で会った時からサムくんの機嫌がすこぶる悪く、練習にも影響して……それはもう大変だった。
教室に戻る時もその機嫌は下降するばかり。
荷物を置く時も椅子を引く時も力任せで、いつもなら賑やかな教室も今は静まり返って、様子を伺っている。
でも私の前に着席した角名くんだけはいつも通りで、……というか振り向いてこちらにスマホを構えて楽しんでいた。
そっと隣のサムくんを伺うと頬杖をつきながら私を見ていて、しっかりと視線が合う。


「……昨日のあれ、何なん?」
「きのう、のあれ…?」
「部活ン時、ツムばっかりええ思いしてたやん。(名前)にちゅーまでしよって……。帰っても自慢ばっかりしてくるしムカつくわ。(名前)が応援してたのは俺やったやろ。何で体育のバレーで勝った俺にはご褒美ないねん」
「サムくん、もしかして……す、拗ねてる?」
「当たり前やん。それにあんな人前でちゅーなんかしとったら、ツムと(名前)がカップルに見えるやろ」


目を丸くしながらサムくんの話を聞いていたら、角名くんが吹き出した。
この場合、何て言えばいいんだろう。
小さく唸りながらサムくんを見れば、ジッと私を見つめ返している。
困りながら見上げていたら、眉間にシワを寄せていたサムくんが体を寄せてきた。
左手を取られて、するりと指先を絡め取られる。
そのままギュッと握られて手の甲にサムくんの唇が押し付けられた。


「もう今日はツムのこと相手にせんといて」
「えっ……と、う、うん……」
「手も離さんからな。ずっとこのままやから」
「でもサムくん、このままって……」
「(名前)、俺といっぱいちゅーしよ、な?」


ずいっと顔を近づけられ言われた言葉に、照れる以外の選択肢はなくて顔を背けようとしたら素早く伸びてきたサムくんの左手が私の後頭部に添えられた。
身動きが取れないくらいにしっかりと固定されてしまって、下手に動くことも出来ず、サムくんの手から力が抜けることを待つしかない。
……待っていたら力が抜けるどころか、その手がグイグイと私の頭を押してきてサムくんと鼻同士が当たった。


「……かわええ。(名前)はほんまに可愛ええなあ」
「サムくん、あの……ち、ちかい……です」
「もっと近寄らな、ちゅー出来へんやろ。せやから(名前)、うんって言うて?俺とちゅーしたいって言うてや」
「おーい、宮たちーっ!いい加減、先生に気付いてくれー。イチャつくなら後にしろー!ホームルーム始めるで」


すぐ近くから先生の声が聞こえて、肩が跳ねた。
びっくりしてサムくんと2人で顔を上げれば隣に先生が立っていて……どこからか分からないけど見られていたらしい。
笑いながら教壇へ向かう先生の後ろ姿とクラスから聞こえるざわつき……ついでに目の前で笑う角名くんに、腕で顔を覆って机に伏せるしかなかった。いや、もうこれは恥ずかしすぎる。
繋がれたままの左手から力を抜けば、反対に強まった。
すぐ近くから小声で名前を呼ばれて、腕からチラリと視線だけを向ける。


「もう少し顔上げて?」
「な、に……んっ!?」
「……今ちゅーしたの、俺らだけの秘密な?そんなかわええ(名前)の顔、他の奴らに見せたないもん。だから後でおかわり貰てええか?」
「え、おかわ……えっ、と」
「慌てる(名前)もかわええなあ……でもツムと付き合っとるって思われてたら悔しいしムカつくから、今日は俺だけ見ててな」


ふんわり笑うサムくんに、体温が上がる。
私の反応に機嫌が直ったらしいサムくんから授業の準備を促されてどうにか動いたけれど、内容は全く入ってこなくて気付いたら終わりのチャイムが鳴り響いていた。



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