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「ツムくん、さっきのサーブとってもカッコよかったよ?」
「……でも(名前)、サムの応援しかしとらんかったやん。見てて言うたのに」


心配していた事が実際に起こってしまった。
ベンチに座ったツムくんの正面に立って覗き込むように話しかければ、足の間に挟まれて痛いくらいに抱き締められる。
座っていても身長があるツムくんだから、このまま抱き締められると胸元に顔が来るからちょっと……というかかなり恥ずかしいけれど、周りを見渡すと皆から「早く侑をどうにかしろ」との視線を受け取ってしまった。
まだ部活開始まで少し時間はあるけれど、本当に少ししかない。
北さんが来るまでにどうにかしないと部活に参加出来ないかもしれないし……。


「た、体育、合同でバレー出来たの嬉しかったけど、ほら……サムくんは同じクラスだから」
「違うクラスやからって、ずっと一緒におった俺を蔑ろにするんか?……ちゃんと俺も見ててや。授業だからやなくてバレーボールをしてる姿でどっち応援するか決めてくれへんと、2年生の間(名前)から応援してもらえないやん。そんなん嫌や」
「さっきも見てたよ?」
「でもずっとサムの応援しとった。……そもそも何でアイツばっかり(名前)と同じクラスになる事多いねん。せっかく今日(名前)と一緒やったからカッコええとこ見せたかったのに(名前)は俺ン事見とらんかったし」
「で、でも最後のツムくんのサービスエース、本当にカッコよくて思わず『ナイッサー侑』って言っちゃって友達に怒られたんだよね。だからちゃんと選手としてもツムくんの事見てたよ」
「……ほんまか、それ?」


ピクッと反応したツムくんが上目がちに見てきて、必死に頷いた。
そしたらツムくんは抱き締めていた腕を少し緩めて、私を自身の太ももに座らせて横抱きにした。
立場が変わり今度は私が見上げると、ぎゅうぎゅうと抱き締められる。
さっきまでの不機嫌なツムくんはいなくなったみたい……。
左腕は依然、私の腰にしっかり巻き付いているけれど、ツムくんの右手がさわさわと頬を滑る。
その指先がある程度遊んだ後に親指が唇をなぞって、顎を掬われた。


「……フッフ。選手としても(名前)は俺ン事めっちゃ好きやもんな。目の前のサムより俺に目を奪われたっちゅうことやろ?かわええなあ!ちゅーしたろ」
「えっちょっ、ツムくんっ!?…………え?」


語尾にハートが付いてそうなくらい楽しそうに話すツムくんの言葉に反射的に目を瞑ったら唇に息が当たるだけで、想像していた衝撃が来なかったから恐る恐る目を開けてツムくんと目が合った瞬間に、ぴったりと唇が隙間なく合わさった。
びっくりして瞬きを何度かする私を見てツムくんは楽しそうに笑ってる。
おでこがこつんと合わさって、近い距離から見つめられて……顔を背けたくてもツムくんの手がそれを許してくれない。
小さな抵抗で私は目を背けたけれど、目を合わせようと何度も追いかけてきて小さな抵抗も失敗に終わった。


「速攻やって身構えたん?……時間差攻撃やで」


言葉と共に唇がまた塞がれるし、その後に唇を音を立てて吸われる。
満足したのか、ツムくんは私をベンチに優しく座らせて皆に声をかけて練習に参加し始めた。
そんなツムくんの背中を見ていたらじわじわと「ここ体育館、だったよなぁ……」と思い知らされて、鏡を見なくても分かるくらいに熱を持った赤すぎる顔を両手で覆う。
その時にいつの間にか体育館にいた北さんに「今のは見られたなかったな……お疲れさん」と肩を叩かれながら言われて、余計に恥ずかしくなる。
あぁ、人前でツムくんとちゅーしてしまった……。
もう今日は意識しすぎてツムくんとお話出来ないかもしれない。



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