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好物に祟りなし

サムくんに手を引かれながら廊下を歩く。繋いだ手を緩やかに振りながら歩いているし、鼻歌も聞こえてきそうなくらい誰がどう見ても今のサムくんは機嫌が良い。
朝練後すぐの1時限目の授業なのに珍しい……とは思ったけどその授業が家庭科の調理実習だから仕方ない。


「今日は何作るん?」
「何だっけ……えっと、グラタンとロールケーキだったかな」
「めっちゃ楽しみ」


席についてからサムくんはずっと目の前に並ぶ食材をそわそわしながら見ている。
サムくんは食べ物の事になると精神年齢下がるよね……。
頭撫でたくなるくらいには、ちょっと可愛い。
ただ私たちの班、今日は一人休みだから効率的にやらないと終わらないかもしれない。
でもメンバーがサムくんと角名くんだから多分どうにかなるはず。


「食材洗うから(名前)切り分けてくれる?」
「もちろん。じゃあサムくんはホワイトソースお願いね?私は角名くんと食材の準備するから」
「え、俺も(名前)と一緒がええ」
「……なら俺がソースやるよ。細かく指示よろしくね」
「はーい。あ、絶対弱火キープでよろしく」


水道前に移動したらサムくんが後ろから抱き着いてきて、肩越しに食材を洗い始めた。
……最近のサムくんはスキンシップが激しい気がするんだけど、どうなんだろう。本人は「これ全部洗えばええの?」なんて聞いてきて特に気にしてないみたいだし。
2人で使う食材を洗い終わって、ハンドソープで手洗いしていたらサムくんが私の手を外側から包み込んで一緒に手を洗い出した。
指の間もまんべんなく洗われるし、泡で滑る感じが何とも言えない感覚になって……何これ……恥ずかしい。
ふいに耳にサムくんの唇が当たる。


「……(名前)もしかして感じたんか?」
「ち、が……う」
「かわええ顔しとる。食いたなるなあ」
「ねぇ薄力粉ってまだ炒めた方がいいの?……あ、ごめん。なんか邪魔した」
「邪魔してない!そっち行く待ってて!……サムくん離して?」
「嫌や。離したない」


歩いたらそのままサムくんもくっついてきて、まだ腕の中から抜け出せずにいる。
このままだと終わるものも終わらない。サムくんもホワイトソース作りに参加させよう。
あの2人なら茹でたマカロニと炒めた食材を渡せばグラタンにしてくれるだろうし、とりあえず薄力粉はもう少し炒めてもらおう。
……渋るサムくんを説得して離してもらい、分担作業で進められたから、あとはもう焼き上がりを待つだけになった。
オーブンの前で今か今かとしゃがんで覗いているサムくんを蹴らないように片付けてたら、スカートの裾をくいっと引っ張られたから隣に同じようにしゃがみ込む。


「なぁ、あとどんくらいで食えるん?」
「んー……もうちょっとかな」
「まだ食えんの?めっちゃええ匂いしとるのに」
「もう少し待てば美味しいのが食べれるよ。サムくんが頑張って作ったんだもん」


焼き上がりを知らせるオーブンの音に素早く反応したサムくんにミトンを渡せばせっせと運んでくれた。
記念にグラタンとロールケーキを写真に残したりサムくんの食べてる姿を写真に撮ったりしながら残りの時間を楽しんでいたら、あっという間に2時限目終了のチャイムが鳴る。
オーブンの前でサムくんと並んでしゃがんでいたところは友達に撮られていたみたいでトークアプリで回ってきた。


「見てサムくん」
「ん?おーええやん。それ俺にもちょーだい。スマホ貸して」


サムくんにそれを見せたら気に入ったらしく、私のスマホを勝手に操作して自分のに送っている。
戻ってきたスマホを見ると、その写真が壁紙に変えられていてお揃いになっていた。



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