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何気ない日常のハナシ

キヨくんから「これから帰る」という連絡をもらって料理を仕上げていたら、荒々しく開いたドアの音に驚いて体が跳ねた。
火を止めてこっそり玄関を覗けば、靴を脱ぐキヨくんの姿が見えて安堵のため息をつく。
近寄れば私に気が付いたキヨくんに抱き締められた。
背中に腕を回せば、ぎゅーっと力が強まってさらに引き寄せられる。


「おかえりなさいキヨくん」
「ただいま(名前)ちゃん…………(名前)ちゃん俺のコト好き?」


突然投げかけられた質問にキヨくんを見上げれば、眉間にシワを寄せ私を見ていた。
頷いたら「ちゃんと言葉にして」って言われ、キヨくんの望むままに言葉にすれば噛みつくように唇を塞がれた。
背伸びをして必死にしがみついていれば、リップ音を残して離れたキヨくんに抱えられて玄関から移動させられる。
洗面所で下ろされ、衣服を脱ぎ始めたキヨくんに慌てて背中を向けるも目の前にある鏡に映ったキヨくんがじっと見つめてくるから、視線が泳いでしまう。
それから後ろから抱き締められた。


「き、キヨくん、追い焚きするね」
「ボタンくらい俺が押す。腕の中いて」
「うん……ねぇ……キヨくん何かあった?」
「近くにいた幼馴染みだったら誰とでも結婚したんじゃないのかって……(名前)ちゃんだから好きで結婚した……(名前)ちゃん以外の幼馴染みだったら好きになってないし、近くにも置かない」


ぽつりとこぼした言葉に目を見張る。
首元に顔を埋めて動かなくなったキヨくんの頭に寄りかかるように頭を預ければ、ぐりぐりと顔を動かしてきた。
……チームメイトと私の話でもしたんだろうけど、キヨくんにとって引っかかる話題だったんだろうなぁ。
腰に巻きついている腕を辿って、キヨくんの左手に自分の左手を重ねる。
するりと撫でたら、すぐさまその位置は逆転して左手を強く握られた。
寄りかかって身を任せていたら、少し顔を動かしたキヨくんに首筋をかぷりと噛まれ、その噛み跡に音を立てて吸い付かれた。


「私もキヨくんが大好きだから結婚したんだよ……キヨくんなら知ってたでしょ?」
「うん……知ってた……何でアイツらあんなに(名前)ちゃんのコト聞いてくるの……もしかして俺の(名前)ちゃん狙ってんの?あり得ねぇんだけど」
「違うと思うよ……キヨくんの結婚相手が気になるだけだと思う」


鏡越しにキヨくんを見れば、ムスっとした表情をしていたから苦笑い。
抱き締められたままでもいいんだけれど、さすがに上半身裸のキヨくんをこれ以上放置する訳にもいかないからお風呂に入るよう促す。
頷いたキヨくんに素早く服を脱がされ、お風呂場に引っ張り込まれた。
――……数十分後のバスタブにはスッキリした顔のキヨくんと、そんなキヨくんにぐったり寄りかかる私が浸かっていた。
頬や肩にちゅーっと吸い付いているキヨくんに、帰宅時の不機嫌さはない。


「(名前)ちゃん、俺のコト好き?」
「……好き、大好きだよキヨくん」
「俺も(名前)ちゃん大好き……ご飯食べたらベッドでもヤろうね」


後ろからぴったりと頬をくっつけてくるキヨくんは楽しそうだ。
キヨくんの脳内を占めていた問題は解決したのだろう……それなら良かった。
もう少し詳しい話を聞きたかったけれど、思い出させて不機嫌になってほしくないから聞き出せない。
お風呂を上がって鏡を見たら、首や胸元の至るところがうっ血していて驚いた。
い、いつの間に、こんな……。
胸元の一つをなぞっていたら、目敏く見つけたキヨくんに手を掴まれて上書きするように吸い付かれた。


「んっ……キヨくん!」
「俺が付けた痕なぞってる(名前)ちゃん見て興奮した」
「ご飯食べようよ……!」
「分かった。ご飯も、その後の(名前)ちゃんも楽しみ」


離れる間際についでとばかりに首筋に思いっきり吸い付かれた。
この位置じゃ何着ても隠れないや……。
キヨくんを見上げれば、タオルで髪をわしゃわしゃと拭いていた。
目が合って「何?」と首を傾げてきたキヨくんに何でもないと首を横に振り、ドライヤーの準備をする。
無言で頭を差し出してくるキヨくんの髪の毛を乾かせば、あの癖っ毛が戻ってきた。
触り心地がいいからついつい指を通して感触を楽しんでしまう。
触られていることについては何も言わないけれど、私の髪の毛が濡れたままなのは嫌らしいキヨくんにドライヤーを取られ、髪の毛に温風が当たる。


「……ん。今日も(名前)ちゃんと同じ匂い」
「そうだね、お揃い」
「(名前)ちゃんとのお揃いが増えるのは、嬉しい」


乾いた髪の毛に顔を埋めてぐりぐりと動かすキヨくんに抱き締められながら、こんな何でもないような日常に幸せを感じる。



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