04






重たい瞼を開くと、頬を一筋の涙が伝った。


彼女、雪音はゆっくりと辺りを見回した。


そこは、見慣れた自分の部屋だった。


あれは、夢だったのだろうか。


「良かった。目が覚めたようですね」


突如、聞きなれない男性の声に彼女は身を竦めた。


「すまない。驚かせてしまったかな」


少し、寂しそうに笑うと、その青年は御簾を上げて室内に入って来た。


「あなたは・・・」


「菅貫霜惺。貴女の父君より依頼を受けた陰陽師でございます」


霜惺は彼女の元まで来ると、床の横に胡座をかいて一礼する。

「依、頼・・・っ・・・」


不意に、彼女の顔が恐怖に歪む。


「あ、わ、私は・・・」


恐怖に震える彼女の手を取ると、霜惺は宥める様に彼女の背を優しく擦る。


「姫。もう大丈夫です。ここは貴女のお邸だ」


「私は・・・っ」


霜惺は、落ち着かせる様に自分の胸にすがり付いて泣く彼女の背中をさすってやる。


自分では彼女の身の内まで察する事はできないが、可哀想なくらい怯えている彼女を不憫に思った。


無理もない。


恐らく他の姫が妖に襲われていく様を見てしまっているのだろう。


「・・・落ち着かれましたか?」


「・・・すみません」


「いえ。それより、お聞かせ願えますか?あの、妖怪について」


「はい・・・」


彼女が言うには、あの辺りに妖怪達の巣があり、日に日に拐われた貴族の姫が食われていったという。


それと、妖怪の子を生ませたかったらしい。


「見たところ、あの妖は人の形をしてはいませんでした。獣とも違う……良く分からない形をしていた」


あんな妖は見たことがない。





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