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不意に、和葉は立ち上がると刀を腰に挿してそう言った。
くるりと蓮華の方に向き直ると、和葉は蓮華を手招きした。
自身の元まで蓮華が来るとそっと耳打ちする。
蓮華は艶やかに微笑む。
「畏まりました」
和葉が座敷を出ると、皆もそれに続く。
それを見て菘も慌てて後を追おうとしたが、後ろから蓮華に両肩を捕まれてしまった。
「あなたはこっち」
「え・・・!?」
まさか自分はここに売られてしまったのだろうか、と戸惑う菘を見て蓮華はにっこりと笑った。
「大丈夫、捨てられたわけじゃありませんよ。貴女には、貴女のできる仕事をというだけです」
「私のできる仕事・・・」
「では、まずはお化粧をしましょうか?」
* * *
菘に化粧を施すと蓮華は満足げに頷いた。
「このままお座敷に出してもいいくらいだね」
「お座敷・・・?」
「そう。でもあの人に怒られちゃうからね。あんたは人探しをしなきゃ」
それを聞いて菘ははっと思い出す。
驚いてばかりで忘れていたが、そもそもここへは依頼人の人探しのために来たのだ。
「あんたはここで騙されて連れてこられた娘を探すんだ。でも気を付けて、あたしの側を離れちゃ駄目だよ。特に鼠頭の楼主には気づかれないように、なるべく下を向いてな」
「わかりました。あの・・・最近入った方とかはいらっしゃいませんか?」
菘がそう聞くと蓮華は少し困ったような顔をした。
「新入りは一人二人じゃないんだよ・・・ここは大きな店だから」
「そう・・・ですか。では、最近入った方を教えてください」
「あいよ。あんた意外と肝が座ってるね、嫌いじゃない。付いてきな」
ぱちりと片目を閉じると蓮華は菘に付いてくる様促す。
「あ、ありがとうございます・・・」
お辞儀をして、菘は蓮華の後ろ姿を見つめる。
まるで頼れるお姉さんだ。
姉という存在がいたらこんな感じなのだろうか、と菘は思った。
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