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* * *




和葉達が店を出ると、楼主と男が何やら揉めていた。


それをちらりと見ただけで気にも留めず和葉はくるりと背後の二人の方へ首だけ動かした。


「ーーーここからは別行動だ。俺は以来主を騙した奴を探す。二人は一緒に聞き込みをしてくれ」


「畏まりました。朔、行きますよ」


「はい・・・」


一礼すると元気の無い朔を連れて蒼詠は歩き出す。


その姿を見送ってから、和葉は首の後ろに掛けていた鬼面を被ると蒼詠達とは反対方向へと歩いていった。





* * *





「くそっ!やってられっか!」


ぼざぼさの頭をかき、暴言を吐きながら男は茶屋の店先の長椅子に腰かける。


「ーーーどうしたんだ?」


不意に、背後に背中合わせに座っていた客から声を掛けられた。


男はびくりと肩を震わせると恐る恐る背後を振り返る。


後ろ姿だが、風貌からいってどうやら若い男の様だ。


「どうも何も騙されたんだよ!」


「ーーーほう。誰に?」


「そんなの言えるかよっ!たくっ・・・最初に聞いてた額より減らされたんだ、ケチつけられてよ!」


「ーーーなるほど、お前は先ほど店先で揉めていた奴か」


顔は見えないがどうやら笑ったらしいことは伝わってきた。


男は得たいの知れない恐怖を覚えて背後に座る人物の背中をまじまじと見つめる。


「あんた・・・」


男が口を開くと同時に、不意に目の前に団子の乗った皿が差し出される。


「ーーーどうだ?甘いものでも食べて落ち着かないか?俺はあんたの話に興味がある」


そう言ってくるりと振り向いたのは年若い青年だった。


「あんた・・・若いな・・・それにその格好・・・役者か何かか?」


「ーーーいいや」


「なら・・・同業か!?」


「それもーーー違うな」


男はますます不振な目で青年を見た。


身なりの良い着物に腰には刀まで持っている。


こいつはひょっとすると世間知らずの武家の若様か。


「割りの良い仕事を探している」


「ーーーは?」


「何か知らないか?あんたがさっき揉めていた店の花魁で会いたい人がいるんだ」


「……へぇ、そいつはどなたで?」


「ーーー蓮華花魁」


「はぁぁ!?何を言うやら……あの人はあんたみたいな…」


言い掛けて男はふと黙る。


そうして目の前の青年をしげしげと眺める。


この青年、顔立ちがかなり整っている。


男はにやりと嗤った。


「ーーー割りの良い仕事を探してると言ったな?」


「そうだ」


青年は頷いたのを見て男は再び満足げに嗤った。


失敗したらこの青年を楼主に引き渡してしまえば良い。


それに使えるようならそのまま使えばいいし、成功しても引き渡すのもありだなとそう結論付けると男は立ち上がる。


「いいぜ、紹介してやるよ。俺もこのままじゃ収まりつかねぇと思ってた所だ」


「仕事内容は?」


「ここじゃなんだ、店を変えようか」


「分かった」











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