07

 





* * *




自室の窓を開けて、菘は夜空を見上げた。


昼間の事が頭から離れない。


今朝は、珍しく朔と一緒に炊事当番だった。


その後一緒に油を買いに行ったときの事。


鈴の音が、頭に響いた様な気がした。


けれどそれも一瞬の事で確かな事は分からない。


その後、菘の顔色を伺った朔が早く帰ろうと言ってきたのでそのまま帰宅した。


けれど、どうしても鈴の音が頭から離れない。


「・・・・・・」


開け放たれた窓から風が吹く。


不意に、視界を白いものが掠めた。


何気なく目で追えば、それは彼女の文机の上にひらりと舞い降りた。


「・・・っ」


それを手に取った瞬間菘は胸を押さえて畳みの上に転がった。


頭の中を、凛とした女の声が聞こえた。


それも一瞬で、次には白い足袋が胸を踏みつけた。


「うっ・・・さい、し・・・さま・・・っ」


『やぁ、久しぶり。その名を呼ばないでくれるかな。お前の言霊には凄まじい霊力が宿ってるんだからさ』


「か、ざ・・・は、や・・・さ・・・まっ・・・」


『お前のせいで人がたくさん死ぬぞ?』


「な・・・ぜ・・・」


『そんな事も分からないのか?お前が逃げ出したからだよ。生け贄がいなくなれば代わりが必要だろう?』


「斎紫様は・・・」


胸倉を掴まれ耳元で囁かれる。


『あの女。死ぬぞ』


「・・・・・・っ!?」


ぱっと手を離されて背をたたみにぶつけた。


痛みに目を瞑りながらも、何故、という疑問が頭の中に広がって行く。


対する風早は面白くて仕方が無いという風に笑っている。


『お前が見捨てたんだろう、菘。お前は助けてもらったのにな』


「私は・・・」


手を伸ばして彼の衣に縋り付く。


が、次の瞬間衣が裂けたかと思うと、畳に人形がクナイで刺さっていた。


「人形・・・か・・・」


そう呟くと和様は菘を抱き起こす。


「怪我はないか?」


「は、はい・・・」


「どこか痛むか?」









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