06 * * *静かな室内に、衣擦れの音だけが響き渡る。懐から一枚の扇を取り出すと、斎紫は扇を開き、立ち上がる。『―――』一度で良い。力ある巫女よ。応えよ。『その身、お借りする』* * *―――同時刻。暗い室内で風早は目を開いた。口元に指をあて、妖艶に孤を描く。「死に急ぐか」光を帯びた彼の目は、彼本来の色ではなく、真っ赤に光っていた。[ 53/61 ][*戻る] [次へ#][目次][しおりを挟む] (c) 2011 - 2020 Kiri