まあネットの情報なので正しいかどうかはわかりませんがなかなか会った人もいないようで様々な憶測が飛び交っているようです。でもそこに共通することがいくつか」
「それって?」
「一つ、性別は女性の話が多いこと。どうやら子供だとしたら娘のようですね。美しい容貌で紫色の瞳を有しているところからすぐ見つかっても不思議ではないのですが……、そしてもう一つは、会うためには条件がある。その条件がどうやら、『興味深い土産話を提供すること』らしいです」
「それ、何だか芥川さんみたいですね」
「ご冗談を。ここでは女性と定義して彼女として話を進めていきますが、彼女はどうやら東宮を監視しているらしいので東宮で起こったことを土産話として提供しろ、とのことだとか。つまり自分の知らないことを教えてくれってことじゃないですか? 自分一人では見切れないでしょうし。新聞に載らないようなことを教えろと」
「つまり言ってしまえば身内で起こった興味深い話をしてくれってことじゃ?」
「興味深いかどうかを決めるのかは彼女ですよ。ただ会ったことない人が多いということはなかなか彼女の求める話のハードルは高いようですね」
「それ本当に会えるんですか……」
「わかりません。でも私は会いたいので頑張るしかないでしょう」
「頼みますから自分から変な事件起こさないでくださいよ……」

半分信じていないであろう同業者をよそ目に、私は頭に浮かんだ案を吐きだした。

「ああ、それにいくつか宛てはありますよ。ここにそういう事件を解決する探偵事務所を開けばいいんです」
「……は? 何言ってるんですか?」
「自分から探しに行くより向こうから舞い込んできてもらった方が早いでしょう」
「そんな簡単なことのように言いますけど、ここ図書館ですよ……? それに許可が取れるとでも……」
「取れますよ。館長さんは基本私の言うことに全面協力してくれますから」
「お父さん今からでも遅くないから考え直してホントに……」
「それにここ、なかなか知名度ありますから下手に建物構えるよりもいいでしょう。ついでに図書館にお客が増える、これで一石二鳥じゃないですか」

じゃあ決まりで、と軽々しく言う私のことをまた彼女は呆れた目で見ているのだろう。結局彼女は私に協力することになるのだろうが、それはまだ言わない方が賢明だ。今は自分は関わらないでおこうという顔をしているのはよくわかる。
とは言えもともと彼女が『眠り姫の導き』という単語を出してしまったのが悪い。私はそう思いこむことにして、早速パソコンの前へと向かった。


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