当たり前だが、芸能界ではたくさんの芸能人が徘徊している。
その中でも群を抜いてトップに君臨しているのが、日本で芸能を司る家門、花鶏だ。
なぜ芸能を司るなんて大げさなことが囁かれているかというと、芸能界を金銭的にもネームバリュー的にも支えているのは花鶏だという点もあるが、やはり美男美女の家系ということもあってアイドルや俳優、アナウンサーなどテレビに映る職業ならなんだって花鶏と名字の付く人間がいるという点だろうか。
まあ花鶏という名字の人間が全員本家の人間とは限らないし、ましてや分家でもない可能性だってあるにはあるが、ただでさえ珍しい名字だ、まずその名字を見たら関係者とみて間違いないだろう。
そして花鶏の中でも今売れに売れているのは、アイドルの花鶏星司。
持ち前の明るい性格と、身体能力の良さ。そしてサービス精神旺盛なところが、若い世代を中心にして人気を集めている。言わずもがな、特に女性からのファンコールが多い。
逆に人数の多いアイドルグループばかり出てきている今時、ソロのアイドルなんて珍しいと思っていたが、案外聴衆受けがいいようだ。
そしてもう一人、花鶏星司と正反対でクールな演技派俳優と言われている人物がいる。
それが彗星の如くあらわれた、石黒佳白なのである(自分で言うとナルシストみたいだが、これはどっかの雑誌から抜粋した謳い文句だ、自分で考えたんじゃない)。

「……ん?」

思案中、突然バイブを伴って来たのは一通のメールだった。
最新型のスマホに映し出されたのは、あまり可愛げのない淡々とした文脈のものだった。
差出人は、先ほど噂をしていた従兄弟から。

『お久しぶりです、テレビでいつも拝見させてもらっています。
覚えておいででしょうか、あなたの従兄弟の藤堂紫織です。
前回、口頭ではありましたがあなたと食事の約束をさせていただいたと存じます。
確かその日時が今日だったはずです、先日からレストランの予約も取ってあります。
仕事が終わり次第そちらの最寄り駅の方へお越しください、待っておりますので。
もし用事がありましたら、あなたの分は後輩と行きますからそこはご安心を。
では、お返事お待ちしております。』

タイミングを見計らったかのように来た業務染みたメールに、何となくだが微かに気持ち悪さを覚えてしまう。向こうからしてみればドラマの撮影が終わる時間なんて公開していないし知るはずもないのでただの偶然なのだろうが。


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