Endless Heaven 【 You would want to meet me, wouldn't you? 】



燃やしきれない、残った情緒。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



その日は土砂降りの雨だった。
俺はとあるドラマの撮影でしばらく屋内にいたが、それが終わってもこの雨はしばらく変わらない調子で降り続いていた。
一応傘は持ってきていたが、俺はあまり傘を差すという行為が好きではなかった。もちろん撮影では何も言わずやって見せるのだが、何せ傘を差すというモーションがまず面倒臭い。折り畳み傘なら尚更だ。
だからと言って濡れたい気分でもなかったので、今回は仕方なく傘を差すことにした。普通の、至って普通のビニール傘。
無言のまま、俺は黙々と歩みを止めることもなく自宅のマンションへと向かっていく。今日は確か自分が出演しているバラエティ番組の放送日だったはずだ。録画し忘れていたのを今さっき思い出して急いでいるところだ。
自分が好きと言われれば好きなのかもしれないが、嫌いと言われれば嫌いなのである。自分を見返すためにという意味も込めて、自分が出たドラマは聴衆目線でも一回見ないと気が済まない。と言っても別にわざわざDVDにして親戚や友人に送るわけでもないし、一回見たらすぐ機器から録画したデータを消してしまうのでどうでもいいと言えばどうでもいいのだが。
未だに自分の本来の性格さえも掴めていないような根無し草の俺とは違って、従兄弟はしっかり自分の使命を全うしようとしている(兄弟姉妹がいない俺には、従兄弟と遊ぶ機会が昔から多かった)。そんなことをふと思い出すと何だか自分が馬鹿馬鹿しく思えてくるのもまた事実だ。
白にも黒にも混じる(いやむしろ本当はどちらにも混ざらないのかもしれない)、自分は結局のところ中途半端でどうしようもない。
長時間振り続けている雨は、こんな風に思考を暗く落としていく。
しかし今回は明るくなることもあった。プライベートで再び外出する用事があるからだ。
この後に珍しく仕事の予定は入っていないのでマネージャーには先に帰ってもらい、一旦身支度を整えてから目的地へと向かうことにした。


prev|backnext


(以下広告)
- ナノ -