青銅たちは顔を見合わせた。
そして氷河が口を開く。
「沙織さん…実は、その神の使いがそこにいるんだが…。」
「!」
「ヘスティアの使いが?」
「ああ…。
今来てもらおう。」
紫龍と星矢が教皇宮を出ていく。
その間、一輝と瞬と氷河は黄金聖闘士と話す。
「俺らが留守の間に、すごいことになっていたのだな…。」
「おかげでこっちは朝から走りまわされていたのですよ。」
「わが師カミュ…お疲れのようですが…」
「いや、この程度疲れとは言わない。」
「なら良いのですが…。」
明らかにやつれてる黄金聖闘士たち。
朝から世界中を飛び回らなければならないのだから、
疲れていて当然なのだろうが…とすこし同情する三人。
「この人だ!」
「今日、町であったのだが…」
星矢と紫龍が連れてきたのは、黒い髪の美女。
淡い色紫のワンピースとカーディガンを羽織って、少しきょどきょどしていた。
「沙織さん。
この人がその聖木を届けに来たティアだ。」
「ご機嫌よう、アテナ。」
にっこりとほほ笑むティア。
その美しさに、思わずその場にいた全員が見とれた。
二人を除いては。
「…なぜ」
小さく、ハーデスがつぶやいた。
「え?」
「ハーデス…?」
青銅たちが、震えているハーデスを怪訝そうに見る。
しかし、ハーデスはそんなことを気にせずに立ち上がり…そして
「何故そのような格好をしているのだ貴様―――――――――――――――ッ!!!!!!!!!!!」
大声で、叫んだ。
わなわなと震えるハーデスの威圧感で、空気がおびえたように震える。
それに一瞬、全員の顔が凍り付いた。
しかし、ただ一人。
ティアだけは笑顔を湛えたまま表情を変えなかった。
「短気ですわね、ハーデス。
神なのですから、もう少し落ち着いたらどうです?」
「少なくとも他の神に比べたら桁違いで余は気が長いわ!
だが!さすがに余でも叫ばずにいられるか!」
「あら、なぜですの?」
「貴様が断りもなく出かけた上に、そのような格好でいたからだ!
そのうえあの青銅どもと街にいただと?
これがどならずにいられないわけがないだろう!」
「そうですか?」
怒鳴るハーデスとのんびりしたティア。
何がなんだか理解できていないアテナとその聖闘士たち。
「ポセイドン…これはどういうことですか…?」
「何で、ティアとハーデスが普通に話してんだよ!」
沙織と星矢が聞くと、額を押さえながらポセイドンが口を開く。
「お前たち…知らずにともにいたのか…。
あやつのことだから、巻き込みたくなかったのか…ただ単にどこか抜けていたのか…。」
「だから!何がだよ!」
額を押さえていた手を下し、真面目な顔をしてポセイドンは告げた。
「あやつが竈の女神・ヘスティア。
クロノスとレアの間に生まれたこの中で一番早くに生まれた神…ようするに、私やハーデスの姉神だ。」
「・・・・え?」
えぇええええぇえええええええええええええええええ!!!!???
教皇宮に、こえにならない驚愕の叫びが響き渡った。
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bkm