49.信じる(光蔵) | |
「ふう…」 「溜め息とからしくないっスね」 「財前…」 全国大会準決勝のS3…相手は青学の天才、不二。 そんな相手に、緊張しない訳がない。 震える手をサッと後ろに隠す。こいつにバレたらこれから先、ずっと笑い話にされそうだ。 「もうちょいしたら部長の試合始まるって、謙也くんが」 「おう、ほーか…」 恋人に、頑張れの一言もないのかこいつは。 今の俺は分かりやすすぎる程、顔にごっつ緊張してます!って書いてあるだろうに。それなのに、応援してくれんのか…財前のアホ。 「じゃ、いこか」 ラケットを握ってよし、と力を入れた。 財前の横を通り過ぎてコートに向かう。 「…蔵ノ介!」 「なん……」 ちゅ、 後ろから名前を呼ばれて振り返ったら、財前に触れるだけのキスをされた。 「…………」 「俺の彼女なんやから大丈夫や、絶対。保証したる」 びっくりして固まっている俺の頭を撫でて、微笑んだ彼にさっきまでの緊張も不安も、全部がぶっ飛んだ。 「誰が彼女や、167p」 「な…!」 偉そうに先輩を励ます生意気な後輩にちょっと意地悪を言ってから、振り返らずコートまで駆け抜けた。 今なら、いくらでも力が湧いてくる。 信じる (君の言葉で無敵になれる。) 120430 |