恋する動詞111題 | ナノ

50.振り払う(真ブン)


誰かが言ってた。

恋愛に性別なんて関係ないって。


でもさ、やっぱそういうのって言葉一つで気にしなくなるくらい、簡単な問題じゃなくねえ?




「好きになったらもうそれは仕方ないって、諦められるのはよっぽどのアホかすっげーポジティブな奴だと思う」

「…それは俺のことを言っているのか?」

「あ、分かった?」


俺の横で部誌を書いている真田に向かって呟いてみたら、意外と反応してくれた。

やっぱ恋人のことは、いくら戯れ言でも無視しないのか。

「そういうお前は、気にしている様だな」

「フツーは気にするだろい。…真田の脳内どうなってんの?」

「…………」


黙り込んでしまった。もしかして怒ったか?

ちょっと不安になったので寄りかかってみる。こいつ、甘えられるのが嬉しいらしい。変わってるよな、やっぱ。
俺はこんな甘えたなのに、それがウザくないとかさ。


「お前のこてで、いっぱいだ」

「へ?」


ハッと顔を見上げると真っ赤な真田のほっぺが目に入った。

…えーっと、今のこいつが言ったの?


「だから、他人の戯れ言など耳に入る余裕など無いと、言って…」
「……あ、」

目があった途端、真田が固まって気づいた。

俺、なに泣いてんだよい。


「たく、仕方のない奴だな…」

「ん…」


呆れた真田が、目尻にちゅっとキスをしてくれた。

こういう意外な優しさが好きだったりする。


(俺も頭の中が真田のことでいっぱいになれるかも…)


そう思いながら、彼の唇にそっと自分の唇をあてた。


振り払う
(君だけを想えばいいだけのこと。)





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