50.振り払う(真ブン) | |
誰かが言ってた。 恋愛に性別なんて関係ないって。 でもさ、やっぱそういうのって言葉一つで気にしなくなるくらい、簡単な問題じゃなくねえ? 「好きになったらもうそれは仕方ないって、諦められるのはよっぽどのアホかすっげーポジティブな奴だと思う」 「…それは俺のことを言っているのか?」 「あ、分かった?」 俺の横で部誌を書いている真田に向かって呟いてみたら、意外と反応してくれた。 やっぱ恋人のことは、いくら戯れ言でも無視しないのか。 「そういうお前は、気にしている様だな」 「フツーは気にするだろい。…真田の脳内どうなってんの?」 「…………」 黙り込んでしまった。もしかして怒ったか? ちょっと不安になったので寄りかかってみる。こいつ、甘えられるのが嬉しいらしい。変わってるよな、やっぱ。 俺はこんな甘えたなのに、それがウザくないとかさ。 「お前のこてで、いっぱいだ」 「へ?」 ハッと顔を見上げると真っ赤な真田のほっぺが目に入った。 …えーっと、今のこいつが言ったの? 「だから、他人の戯れ言など耳に入る余裕など無いと、言って…」 「……あ、」 目があった途端、真田が固まって気づいた。 俺、なに泣いてんだよい。 「たく、仕方のない奴だな…」 「ん…」 呆れた真田が、目尻にちゅっとキスをしてくれた。 こういう意外な優しさが好きだったりする。 (俺も頭の中が真田のことでいっぱいになれるかも…) そう思いながら、彼の唇にそっと自分の唇をあてた。 振り払う (君だけを想えばいいだけのこと。) |