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「降りてこんか、赤也!」 「やだっ!絶対降りたくないっス!」 部活が始まる前に丸井先輩に、この間膝かっくんされた仕返しをしようと思ったのがそもそもの間違いだった。 標的である丸井先輩を見つけたのでちょっと助走なんかしてしまい勢いよく衝突。 正直、勢いをつけすぎて何がどうなったかなんてあまり覚えてないけど、とりあえず丸井先輩は無傷で、真田副部長が片膝を立ててしゃがんでいた。おまけに肩が震えていたのだ。 これはまずいと、俺の本能が瞬時に察知し猛ダッシュで逃げたら先輩も過去最速の速さで(しかも鬼のような形相で)追いかけてきたのだ。 それを見て更に命の危険を感じた俺が辿り着いた先は木の上。真下には真田副部長。 俺多分、木から降りたら確実に……嫌だ、そんなの嫌だ! 「ご、ごめんなさい!」 「赤也、もう怒りなどしない。ただお前に話があるだけだ」 「でも、殴られるっス」 「殴るのは試合に負けたとき、それだけだ」 いつもよりずっと優しい声色の先輩に、今まで張り詰めていた糸が急に切れたみたいにボロボロと涙が零れた。 そんな俺の様子に気づいた先輩が赤也、と名前を呼んで手を差しのべてくれた。 木と言っても先輩の背ならさほど高くはないし、俺が登った位置もあまり高いところはないので、きっとここから飛び降りたって受け止めてさえしてくれれば大丈夫だろう。 ギュッと目を瞑って俺は飛び降りた。 「……、赤也」 「ん…」 確かに感じる先輩の体温に安心して目を開けた。 抱き抱えられる様な体勢だったのでちょっと恥ずかしくなったけど、そんなことをずっと考えていられるほど俺の頭は良くない。こんなにも近くに好きな人がいることが嬉しくて、心臓が張り裂けそうだ。 「全く、お前は何故いつも危なっかしいことばかりしたがるのだ」 すとん、と地面に降ろされてからの第一声はそれだった。 「…ごめ」 「いい、もう謝るな」 いきなりぎゅっと、先輩に抱き締められた。 ちょ…意味わかんね…… 「見ているこっちの身にもなってくれ。そうあまり、驚かせるな」 「はい…」 「慕っている者が怪我などしてみろ。気が気じゃない」 「は…い?」 慕ってる?慕うって、好きってこと? 好きって、誰のことっスか先輩…? 「…はっきり言おう。赤也、俺はお前が好きだ」 「………」 「黙っていては、分からんぞ」 「お、俺もっス…」 未だに抱き締められたままでまさかの告白が行われた。 あれ、これって順番逆じゃないの? 「あ、」 「あぁ、すまない。嬉しくてつい力が入ってしまった」 「…いや、全然大丈夫っス!」 先輩のその言葉でやっと実感が湧いてきた。だから俺もぎゅうって抱きついてみたらやっぱり先輩の温もりに安心して、今日からここが俺の居場所になるんだな〜…なんて、思ってみたり。 見つける (貴方の腕の中は俺だけの居場所) 120423 |