恋する動詞111題 | ナノ

46.眩う(千ユウ)



初めて彼を見たとき"変な奴"というのが正直な感想だった。

男のクセに男が好きだし、モノマネに命かけてるし、目つき悪いし。
たまに小春ちゃんに言われたことにマジで落ち込むとことか。

とにかくユウジは"変な奴"という印象が強かった。



「また今日もサボりか」

「…珍しかね、ユウジが授業中にこぎゃん場所に来るんは」

「今日小春が生徒会の用事で他校に行ってんねや。せやから1日中暇になってもうた」

「お前の1日は小春ちゃんで回っとるんやね…」

「学校なんて小春と青春するために来とるようなもんや……!!」
「ユウジ怖い…」


小春ちゃんのことになると恐ろしいほど勢いの増す彼に圧倒されてしまう。

よいしょと俺の隣に座りこちらをジッ…と見てきた。さっきまでのテンションの差に少し、いやかなりえ?ってなった。

そんなに見られると穴が空いてしまいそうだ。


「…どぎゃんしたと?」

「いや…千歳っていっつも1人でここにいてるん?」

「まあ…」

「つまらんことない?」

「大体は寝とうけんそげんこつば思ったことなかと」

「ふーん」



うん、ユウジはそうなんね。顔に書いてあるっちゃ。



「じゃあ今日は寝かせんからな」

「…はいはい」


適当に返事をしたら急に黙り込む。
いきなりしゃべったり黙ったり、忙しくないのだろうか。


「そういや俺、千歳とちゃんと話したん今日が初めてや」

「あ〜そう言われてみたらそうばい」

「お前もっといかつくて言葉が通じんような奴かと思うとったけど、案外やな」

「俺もユウジは変な奴思うとった。今もだけど」

「おうおう喧嘩売っとんのか?買うたる」


こんなふざけた会話をしていたら、気づけば何時間も二人きりで話していたらしくもう空が青からオレンジへ変わろうとしていた。


もしかしたら、気が合うのかもしれない。



「ここ、初めて来たけどこないな夕日見れるんやなあ」


俺の方を向いて笑ったユウジの顔が夕日のオレンジ色の光に照らされて、いつもと違って見えたその姿に心臓が跳ねる音がした。






眩う

(俺には眩し過ぎる、その笑顔)




120409


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