恋する動詞111題 | ナノ

45.振られる(忍ジロ)


「忍足って俺のこと好きなの?」



野暮用で少し遅れたので、誰もいない部室で着替えていたら、どこからともなくジローの声が聞こえた。

辺りを見渡せばソファに横になってこちらを見ているジローの姿があった。

視線が低いので気づかなかった。
部活の始めに起きてるなんて珍しい。明日は雨やな…なんて思ってみたり。








いや、そういうことじゃなくて。

もしかしたらまだ寝ぼけているのかもしれない。

ほっぺたをペチペチ叩いてみるが、普通に嫌がられたのでちゃんと起きてるらしい。


じゃあこれは本気で聞いてきたのか…


「…ね、忍足」

「誰がそんなデマお前に吹き込んだんや」

「?別に〜…俺がそう思っただけだC」

「何を根拠にそないなこと…」

「だって俺が起きた時、いっつも傍にいるじゃん」


それは最近樺地の代わりにって、跡部からお前の面倒見るように言われているからで…

だったら樺地にも言ったのだろうか。自分のことが好きなのかって。

そう考えたらちょっとムカッとなった。



「ふーん。俺は好きなんだけどなぁ、忍足。フラれちゃった」

「は?」

「んじゃあ練習行くね!」

元気よくラケットを握ってコートに出ていったジローの背中を見つめながら彼が言っていたことをよくよく考えてみる。



俺がジローを好きになるなんて、きっとない。




きっと…




振られる

(ちょっと悲しそうな顔が忘れられないなんて、そんな)



120408


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