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最近、謙也がクラスの女子と急激に仲良くなり始めた。 いやいや、俺ら恋人やろ…。 今日という今日は耐えきれなくなり、休み時間に小石川のところに駆け込んで、愚痴を聞いてもらっている。 小石川は副部長ということもあり、俺のことをよく分かってくれているので、何も言わずに黙って話しを聞いてくれた。 「ほんま急にすまんな」 「ええで。それにしても白石は、恋愛になると途端に自信なくすんやな」 「恋愛は基本も何も、初めてやから」 「そりゃあ不安にもなるなぁ。謙也も白石がこないな気持ちになっとること知ったら、可愛くてしゃーないやろうにな」 「かわいくないわ、アホ」 チラッと時計を見れば、もう少しでチャイムが鳴りそうだったので、小石川に礼を言ってから教室を出ようとしたら、扉の前に謙也がいた。 「お、おぅ…謙也」 「…白石、次の授業サボるで」 「は?何言っとるん…」 「ええから」 少し怒ったような口調で俺の手を引っ張り、屋上へ続く道を歩く謙也。 「謙也、いたい…」 「俺かて、痛いわ」 あまりにも強く引っ張るもんだから、抗議してみたら意味のわからない返答をされた。 いや、何でお前も痛がってんねや。 「ここなら、誰にも邪魔されん」 「うん…?」 屋上へ着けばすぐに、追い詰められ俺はフェンスに背を向ける。 目の前にごっつムスっとした謙也がおるせいで、自分が怒られると思い、ぎゅっと目を瞑った。 「お前、何で休み時間に健坊のとこいって、あないに楽しげに話ししとったんや」 「…え?」 確かに怒ってる。 けど、これは…何かちがくない? 「せやから、何で俺んとこやのうて健坊んとこ行ったんやって聞いてんねん。 俺のこと、もう好きやないん?」 「ちが……、俺はずっと不安で…あ、」 気づいたら涙が流れていた。 怒りたいんは、俺の方や。 「謙也が女子と仲良うしとるとこなんか見たないねん…楽しそうに笑うとるとこなんか見たない…っ」 勝手に動く口を止めることもしないで、どんどん溢れる言葉を言っていたら、突然謙也に抱き締められた。 「それ、俺めっちゃ悪いやん…ほんま、白石泣かせて何やってんねやろ」 「せや…謙也のバカ、アホ、ヘタレ」 「うん、ごめん」 「ドジ、わからずや、地味」 「うん」 「…好き」 「うん、俺も。白石が一番好き」 疑う (たまに好きって、言ってくれれば十分だから。) 120318 |