恋する動詞111題 | ナノ

4.懐かしむ(三強)

※10年後三強





「そういえば俺たち、三角関係だったよね」



久しぶりに三人で飲もうという話しになり、少し酔った精市がふざけてか、本気でか、ふいにそんなことを口にした。


「俺たちにも若い頃があったという事だ」

「真田に若い頃があったなんて、それは驚きだな〜」

「弦一郎もやっと見た目と年齢が近づいてきたんだ。そう言ってやるな」


「柳…それはふぉろーというものになっていないのではないか?」

「やっぱりコイツ何にも変わってなかったよ。フォローくらいカタカナで言えよ弦ちゃんが」

「ゆ、幸村…その弦ちゃんと言うのは、やめてほしいと…言ったはずだ」


俺が思うに、誰一人変わってはいない。
何も変わらないまま時間だけが過ぎていった気がする。


だからきっと、いまでも三角関係は続いている。


「確か、弦一郎は幸村で幸村は俺だったな」

「そうそう!コイツ本当に俺のこと好きだったよ」

「た、たるんどったのだ!」

「過去形…ということは、今はもう好きではないのか?」

「あぁ、俺はあの時のたるんどった自分と決別した」

「弦一郎、大人になったな…」

「柳、因みに俺もたるんどった自分にバイバイしたぜよ」

「精市、飲みすぎてはいないか?」

「問題ないったい!」

「重症だ…弦一郎、酒と水を変えてやってくれ」

「わかった」


二十歳を越えてから、立海のメンバーで飲むことは多々あった。
その度に精市は飲みすぎて、暴れるだけ暴れてから眠りにつくというパターンに限定されているので、タイミングさえ謀れば後はこちらのものだ。

こう、イップスを乱用されると困る。
味がしなくなるし、見えなくなるしなんかもう最悪だ。


「今回ばかりは未遂で終わってほしいものだな…」

「これで精市が暴れる確率は35%になった」

「もっと飲む!飲みたい!」

「あ、あぁ。これを飲むといいぞ幸村」


そう言って真田は水を差し出した。

「珍しく気が利くじゃん!

柳くん、座布団一枚持ってきて!〜」

「それは山田くんだ。
あと酔っぱらいの言葉に一々気を落とすな弦一郎」

「うーん、やっぱりこの酒はみんなで味わいたいなあ!」

「俺の嫌な予感が当たる確率100%」

俺がそう呟いてから、精市が行動に移すまでとても早かった。


奴は持っていた水を口に含み、あろうことか弦一郎に口移しをした。


まぁつまり、今俺の目の前では同級生のキスシーンが繰り広げられているのだ。

うっかり開眼なう。


「っはあ!…どう、真田?美味しい?」

「ななななななな////////」

「なじゃ分からないぞ〜もう一回やっちゃうぞ〜」


それ以上は止めてくれ。弦一郎がいたたまれない。

「精市、そこら辺にしておけ。果ては泣いてしまうぞ、弦ちゃんが」

「あはっそうだった!ごめんね、弦ちゃん。

…ファーストキス奪っちゃって(^ω^)」


全く悪びれもしない酔っぱらいを俺は今最高にどつきたいが、ずっと片想いしている者からの突然の口づけに、戸惑いまくっている弦ちゃんを介抱するのが先だ。




全く、それでは今でも好きなのがバレバレだ。




まあ俺だって弦一郎への気持ちは……




「ふ…また新たにデータを取るとしよう」






───本当に俺たちは、何一つ変わっちゃいない。



そう思うと、自然と顔が綻んだ。






懐かしむ
(いつまでも変わらない気持ち)






111014






柳生がコンタクトになっても、仁王が真面目に働いても、ブンちゃんがダイエットしても、赤也がストレートになっても、ジャコーが色白になっても、三強だけは変わらないと信じているぞよ。



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