恋する動詞111題 | ナノ

3.諦める(蔵謙)



「なあ、その髪の毛地毛なん?」


「せや…けど」


「ふぅん」


入学当初、まだ周りに慣れてない時期だった気がする。

そんな中話しかけてきたのは、脱色し派手な髪色をした謙也だった。


俺は真面目に学校生活を送ろうと心に決めていたのに、いきなりこんな不良に目をつけられたなんて。

サヨナラ俺の平穏な学校生活。


と、こんな調子で第一印象は最悪だった。


しかも部活まで一緒。

なんなんだ、俺が一体何をしたんだ!





「お、さっきの奴やんか。
部活同じなんやな、よろしゅう!」

「よろしゅう…えっと…」

「謙也。忍足謙也言うねん!
お前は?」

「俺は、白石蔵ノ介や。
こちらこそ、よろしゅう」

「俺は謙也でええからな、白石!」

ニカッと笑った謙也に、俺はしっかり心を掴まれた。


なんだコイツめっちゃ可愛い…!


俺、どないしよ惚れてもうた。
これ完璧惚れた。

ってか初恋が男ってどうなん!?



こうして始まった俺のスクールライフも早二年が過ぎ、三年になって奇跡が起こった。




「白石!一緒なクラスやで!」

「ホンマか謙也!?」


その頃はもう俺たちはお互いを親友と呼べるような仲にまでなっていた。

その間、もちろん俺はずっと謙也に片想いをし続けていた。

謙也が告白されたり、付き合ったり、別れたり。

間近で謙也が彼女と一緒にいる姿を見ていた俺は激しく居たたまれなかった。

だけどやっぱり中学生の恋愛なんてたかが知れている。

謙也の恋はそんなに長く続きはしなかった。


「恋愛って難しいなぁ」

「せやな。まぁ謙也は今回身を持って知れたんや。
これからその経験を生かしていけばいいやん」

「白石、大人やなー」


悲しそうに笑う謙也も、好きだと思った。

俺ならこんな顔させないのにとも思った。


こんな、仮定ばかりの付き合いじゃ物足りない。


俺は謙也と同じクラスになったこの一年間で必ず恋人になってみせる。



だから、ずっと親友でいるなんて選択は







諦める
(もう遠慮なんてしない)





111012


本気の白石にかかれば謙也くんはイチコロ。



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