91.溢れ出す(岳日) | |
「…………」 「おい日吉」 「……はい」 「いつまでそうしてんだ」 部室の椅子の上で体育座りをして丸まっている日吉の横に腰かける。 これはコイツが反省する時のポーズだ。 だから今反省中なんだろうけど、今日は別に反省することなんかなかった気がする。 寧ろ、いつもより張り切って練習してた。(ちょっと荒っぽかったけど) 「どうしたんだよ。何かあったのか?」 「はい…もう、立ち直れないかもしれません」 「は?そんなにショックなことがあったのかよ」 「えぇ、大打撃を受けました」 顔を埋めていた日吉がチラッとこちらを見て、小さな声で「向日さんのせいです」なんて言いやがった。 本人は睨んだつもりだったんだろうけど、ほんの少しだけ上目遣いが可愛いとか思ったけど、俺のせいって何なんだ…俺、日吉に何かしたっけ? 「あ…そういや、今日初めて話すな」 「当たり前です。ずっと避けてたんですから」 「…何でだよ。俺お前に何かしたか?」 「しましたっ…許せません」 えー… 本当に何で俺、こんな傷つかないといけねぇんだよ…… 「言えよ。じゃなきゃわかんねぇし」 「言えません」 「…………おい」 「無理です。死にます」 「おい、言えって。死なないから」 宥めるように彼のさらさらな髪に触った瞬間、ガバッと顔を上げて 「そうやって、貴方が優しくするから好きになってしまったんですよ!」 耳まで真っ赤にして…え、コレってそんなに怒られることなの? 今にも逃げ出しそうな日吉の腕を掴んで、自分の方に引き寄せる。 「んな事言われたら、こっちも止まらねぇよバーカ」 やっぱり真っ赤に染まっている耳元でそう言ってから、混乱している日吉にキスをして更に混乱させてみたり。 溢れ出す (止める方法なんて知らない) 130307 |