ゆらゆらと揺れる意識の中、重い瞼をゆっくりと開く。ぼんやりとした視界に広がる"白"は光を反射して眩しい位に輝くから何故か泣きそうになった。
「…ここは…」 「なまえ、おはよう」
徐々に鮮明になる景色に瞬きを数回繰り返す。
「驚いただろ?」 「どういう、事」 「なまえが眠ってる間に業者に頼んで引っ越ししたんだ」
急な事態に頭の中が混乱して真っ白になる。今まで居たアパートはどうしたの?荷物は?
「さっき全部買って来て揃えた」
なまえが好きそうなマグカップ、色違いの歯ブラシ、可愛らしい家具とお揃いの食器…
「前のやつは全部捨てたから」 「…全部?」
案内された部屋にはふかふかのベッドと大きなクローゼット。その中には見た事の無い服がたくさん掛けられていた。
「なまえの服も靴も身に付ける物は全部新しくしたんだ」 「こ、こんな買い揃えるお金…」 「フフ…まあ、いいじゃない」
大きな手のひらが優しくなまえの頭を撫でて、強く身体を引き寄せられる。至近距離で見つめられて名前を呼ばれると、あの執拗な行為の苦痛と不安が思い返されてふるりと震えた。と同時に身体の奥底で、ずくん、と甘く疼く何かが沸き上がって恥ずかしさで視線を逸らしてしまう。
「なまえ、可愛い」 「っ…や、待って、お願い」
ベッドに押し倒されたなまえは弱々しい抵抗を見せたけれど、本気で拒んだとしても無駄だとわかっていたからそれ以上の事はせずにアカギに身を任せた。
***
「次に逃げたらどうなるか…わかるよな」 「…私"も"消すの?」 「そんな事する訳無いだろ。だから」
足を切り落とす
「ククク…冗談だって」
冷や汗が背筋を伝って流れ落ちる。薄笑いを浮かべたアカギの瞳の奥には狂気の片鱗を窺わせるような漆黒の闇が渦巻いて、なまえの心を凍てつかせた。
裏切るなら壊すよ
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