"足の腱を切ると歩けなくなる"とか聞いた事ない?

「本当かどうか試してみようか」
「や、やめて!お願い」

鋭いナイフがひやりとなまえの肌を滑る

「逃げ出さないようにするには、どうしたらいいのかな」

まさか檻に入れる訳にもいかないし

「俺の事好きだって言ったじゃない」
「…怖いの、アカギさんが…」
「フフ…どこが?」

こんなに優しくしてるのに

「きっと愛が…足りないんだ」

でもこれ以上どうやって愛せば良いんだろう

「愛し方がわからない」

頭がぐらぐらする

迫り上がる吐き気を抑え込むと胸が苦しくて堪らなくなった。どうすれば、どうしたら、

「なまえ…」

初めて【愛しい】と思った。これがそうなんだ、と不思議な感覚だった。自分の事じゃないみたいな…

「直ぐに新居に引っ越そう」

ここに居るとなまえに良くない。いつまでもアイツの事を忘れられないだろうから

「イチから新しい生活を始めよう。二人で」

放り投げたナイフが床に刺さって驚いたなまえは小さな悲鳴を上げる。ガタガタと震える身体を引き摺って部屋の隅に逃げると、それを追いかけるように近づいて愛しそうに抱き締めるアカギの手が酷く優しかった。

その愛は致死量を超えている

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