愛してると繰り返すだけなら誰にでもできるので、



白い肌に散らばった赤い痕が眼を抉るように鮮やかに映る。季節は秋だというのに室内は密閉されて換気をしていない所為か熱気で蒸し返していた。

「クク…まだ足りねえ」
「アカギ、さん…」

寂れたアパートの片隅で幾度となく繰り返される凌辱と甘く囁く愛の言葉。日夜問わず犯され続け、心と身体が悲鳴を上げているのに

「なまえ、愛してる」

監禁されてもうどれくらい経つのかわからない。わかる事と言えば、私は借金の形に売られたという事実だけ。

あの夜

仕事の帰りに彼から呼び出されて着いた先は裏路地にひっそりと佇む雀荘。恐る恐る階段を上がってドアを開けると薄暗い店内の奥から彼に手招きをされた。近づく私の目に映ったのは、彼の横に座ってつまらなそうにタバコの煙を燻らす白髪の男。

「ど、どうです?中々良い女でしょう」
「アンタがそれで構わないなら」

切れ長の瞳が品定めするかのように眺めたあと、小さく鼻で笑って「行くよ」と言った。訳がわからず立ち尽くす私の腕を掴んだ男に連れられて雀荘を出るその間際、安堵の表情を浮かべて見送る彼に理由を聞いたけれど結局何も言ってくれなかった。

夜の街のギラギラとしたネオンが眩しくて目を細めたら自然と涙が零れてきて、不安でいっぱいになる。

「私、どうなるんですか」
「…さあ。どうして欲しい?」

ニヤリと笑う男の名はアカギ。入って、と促されて半ば強引に押し込まれたアパートの狭苦しい部屋にはぽつんと敷かれた布団と小さなちゃぶ台が置かれていて、長く垂れ下がった照明の紐を引っ張るとゆっくりと瞬いた光が色褪せた畳を照らす。

「アンタさ、あいつの借金の形に売られたんだ」
「…それを貴方が買ったの?」
「まあ、俺は腕一本でいいって言ったんだけど」

腕よりいいモンがある、って

一目見て、本当かどうか試してみたくなって承諾した。でも今にして思えば正解だった。

「なまえ、愛してる」

大きな手のひらがまろやかな曲線を辿り、強く優しく掻き抱くアカギの腕が日毎夜毎、彼女を離さずにいる。

「こんなに身体が合う女、初めてだからさ」

そうしてまた今日も熱く昂る身体を重ね続けるのだ。




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