早く俺のこと好きになってよ。じゃないと俺、



とある病院の看護婦はここ最近入院してきた青年に少々困惑していた。

「アカギさん、お熱測りました?」
「いや、まだ」
「じゃあ測っておいて下さいね。また来ますから」
「みょうじさんがやってよ」
「ふふ…子供みたいなわがまま言うんですね」

倉田組との一悶着後にアカギが入院した病院で出逢ったみょうじ。

傷の様子はどうですか?
お薬飲みましたか?

仕事上での事務的な会話だというのに彼女が言うとまるで自分だけが特別気にかけてもらっているのかと錯覚してしまう。

「少しお熱ありますね」

水銀体温計を振りながら戻すと、柔らかな手のひらをアカギの額へとあてがう。

「みょうじさんの所為だよ。熱、」
「私の?」
「俺さ、アンタの事、好きなんだ」

にこやかに微笑んで「今、水枕持ってきますね」と何も聞かなかったみたいにはぐらかすから余計に困らせたくなる。

「ねぇ、みょうじさん」




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