どうしようもないくらい、好き
そっと髪に触れる。光が反射してきらきらと輝きを放つ白銀の、しなやかで絹のような手触りに思わず目を細めた。
「赤木さんの髪、柔らかいですね」
「ん?そうか?特に何もしてねぇんだけどな」
膝枕でなまえに頭を撫でられている赤木は、若さ特有の張りのあるすべやかな肌にすり寄って感触を確かめた。いつもと変わらない二人の距離。恋人でも親子でもない、ただの…
「ふふ…何だか猫みたい」
けれど二人で居る時間が心地好くて
「こんなくたびれたジイさん猫じゃつまらねえだろうよ」
「そんな事ないですよ?私は好き…です。大人の渋さとか、落ち着くというか、一緒に居ると居心地が良くて」
撫でていた手が止まる。どうしたのかと気になった赤木は瞑っていた目を開けてなまえを見上げると、彼女の顔は耳まで赤く染まっていた。
「なまえ、どうした」
「…あの、すいません。言葉にしたら急に、は…恥ずかしくなって」
言葉に詰まったなまえは熱を逃すようにため息をひとつ吐いてから
「やっぱり私…どうしようもないくらい、赤木さんが好き、かも」
ほんの僅かな沈黙のあと、小さな声で囁くように呟いた彼女の本音。
「そりゃ嬉しいねえ」
ありがとよ、と笑いながらなまえの手を取って優しく撫でる。二人の距離が近づいたような気がした、そんなある日の出来事。
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